「東京藝術大学」の卒展の投稿でひと悶着かと思いきや その後の展開に思わずほっこり
作品とキャプションに込めた思い
―――卒業・修了作品展で制作した作品について教えてください。 これまでにメモしてきた恋人の話し言葉をもとに作ったぬいぐるみ。 表面の生地には、恋人との生活を記録した写真を印刷し、刺繍機で文字を刺繍した。中学生の頃から、友達や恋人や先生に言われた言葉を記録する習慣があり、私にとってメモしてきた言葉たちはお守りのような存在である。 ぬいぐるみは、持ち主以外は基本的に触れず、持ち主の生活空間に入り込むプライベートなもちものである。ぬいぐるみという形式をとることで、個人的な、私のための作品として制作した。 今私たちは簡単に言葉にさわれる。 本を読んだり、Twitterを見たり、LINEが届いたりする。人の言ったこと、書いたことを自分のもののように大切にできる。私もそうしてきた。 だからこそ恋人が私に話した言葉だけは、ぬいぐるみと同じように、他の人からはさわれない大切なものであり、ビニールに密閉した状態でさわられないように展示する必要があった。 ―――話題になったキャプションはどのような意図で書かれましたか。 他人の言葉を自分のものにすることも、ぬいぐるみに話をさせることも、本当にグロい。 私が心から、“他人の言葉を自分のものにしていいことになる”と思っていたら、そうは書かないし、“さわっても動かないからさわっていい”と思ってたらそうは書かない。ことばは変わらないけど千年後に私はいない。ぬいぐるみは死なないけど朽ちる。 でもここでは全部分からないふりをしておきます、分からないから今はこの言葉とぬいぐるみを必死で愛します。という態度を表すためにあのキャプションを書いた。 でも、そこまで読めなくても別にいい。一層目の意味だけとってもいいよ。 ―――今回大きな反響があったことについてはいかがですか。 作品でバズるより文字でバズる方がフォロワーは増えやすいのかなと思った。文字はみんな読めるから。 髪色を、作品に合わせてわざわざ青くして見にきてくれた高校生がいて、それはすごくうれしかった。