「妊娠中はシートベルト不要」と思っていませんか? 胎児の安全を守るために知ってほしい真実とは
意外と知らない妊婦の交通法
日本国内では多くの地域で、自家用車が日常的な移動手段として利用されている。そのため、妊娠中でも「クルマを運転する・乗る」という機会を減らすことは難しい。通勤や買い物だけでなく、定期健診や出産に向けた準備など、外出する機会が増えるからだ。 【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが60年前の「海老名サービスエリア」です! 以前は 「妊娠中はシートベルトをしなくてもよい」 という考えが広まっていたこともあったが、実際には道路交通法によりシートベルトの着用は義務である。2008(平成20)年6月1日からは、運転席、助手席、後部座席を含むすべての座席でシートベルトを着用することが求められている。妊婦が運転していなくても、同乗している場合はシートベルトを着用しなければならず、着用しないと違反になる。 ただし、緊急時ややむを得ない場合には免除される特例も存在する。このため、一部の人々の間では「妊娠中はシートベルトをしなくてもよい」という誤解が広がったのかもしれない。 おなかが大きくなっている状態でシートベルトを着用することに抵抗を感じるのも理解できる。しかし、妊娠中こそシートベルトの着用が重要である。本記事では、1児の母である筆者(小島聖夏、フリーライター)の体験を交えながら、妊婦におけるシートベルトの重要性について紹介する。
妊婦の85%が運転中
日本交通科学学会の会誌に掲載された論文「つわりと自動車運転-妊婦運転者に対する実態調査-」によると、妊娠後も85.3%の女性が週に1日以上自動車を運転している。 この論文では、1000人の妊婦を対象に「自動車事故またはヒヤリハットの発生率」に関する調査結果が示されている。ヒヤリハットとは、重大な災害や事故に直結する一歩手前の出来事を指し、 「自動車事故またはヒヤリハットの経験あり」 と答えた妊婦は全体の10.6%に達した。 さらに、「妊産褥婦におけるシートベルト着用とチャイルドシート使用の推奨」という論文では、2420人の妊婦を対象に行った「妊娠中シートベルト着用状況に関する後方視的アンケート調査」の結果が示されている。この調査では、妊娠中に交通事故に遭遇した妊婦は2.9%という結果だった。 数値的には低い割合かもしれないが、この結果を軽視して「私は大丈夫」と考えるのは危険だ。筆者自身も事故に遭った経験があり、幸いにもケガはなかったが、おなかの子どもに危険が及ぶ可能性を考えると今でもゾッとする。 また、前述の論文には「アメリカの研究で、妊婦の6~7%が妊娠中に何らかの外傷を負い、新生児の約1%が子宮内で交通事故を経験している」という記載もあった。注意を払って生活していても、事故に遭う可能性は十分にあるのだ。 これらの結果と自身の経験から、クルマに乗る際のシートベルト着用は妊婦自身と子どもの安全を守るために不可欠であると考えている。