竜星涼の“愛され力”によって成立 藤原隆家は『光る君へ』で最も成長したキャラクターに
NHK大河ドラマ『光る君へ』の第46回「刀伊の入寇」で描かれる、太宰権帥となった藤原隆家(竜星涼)の勇ましい活躍シーンへの期待が高まっている。 【写真】『光る君へ』序盤では“悪童”の雰囲気だった藤原隆家(竜星涼) まひろ(吉高由里子)が太宰府に到着した寛仁3年(1019年)に刀伊と呼ばれる海外の海賊集団が対馬と壱岐など、北九州沿岸を襲撃。多くの人が殺害、拉致されるなか、その侵攻を食い止めようと兵をまとめたのが隆家だった。 眼病の治療のため、太宰府への赴任を希望した隆家は、多くの家人を連れて行ったようで、その家人たちも隆家のもとで働いた。予想もつかない敵の奇襲を仲間と防ぐなんて、平安時代のヒーローが隆家の本当の姿だったのか……。やんちゃで時に問題児。憎めない弟キャラとして登場し、回を追うごとに成長する姿を見せてきた隆家。 竜星涼が演じる隆家は「長徳の変」を起こした張本人でもある。竜星のクランクインは花山院を襲うシーンの撮影だったようで、華やかな中関白家に生まれながらも我が道をとことん突き進む隆家としての波乱含みの幕開けだった。 この「長徳の変」をきっかけに兄の伊周(三浦翔平)と隆家は左遷され、姉の定子(高畑充希)は出家。道長(柄本佑)に権力が集中していくなかで、隆家の家族には次々に不幸が押し寄せた。両親の期待を背負っていた優秀な兄・伊周は道長との出世争いに負けたことを認められず、自分が大切なものを失っていくのは道長のせいだと呪詛を極めてしまう。 怖いもの知らずの末っ子・隆家だったが、兄・伊周の変わっていく姿や姉・定子が置かれた難しい状況を知り、叔父の道長の政治手腕を学び、視野が広くなっていったのだろう。良いことも悪いこともポジティブに受け止めて、過去にも物事にもこだわらない。未来志向の人物として、その成長が回を重ねるごとに感じられた。 竜星涼は、公式サイトのインタビューで隆家として、過去の伊周や定子とのキラキラした楽しかった思い出に固執する「ききょう(ファーストサマーウイカ)をちょっと煩わしく感じる(笑)」と語ったりもしている。(※) とはいえ、ききょうとしてみれば「長徳の変」さえ起こさなければ定子の運命は違ったものになったかもしれないのに、という思いがあるだろう。起きてしまったものは仕方がない。悔やんでも過去には戻れない。ただ、自分たちが悔しく、辛い思いをしている一方で、輝くような栄華を誇る道長のような存在を感じると恨み言の一つも言いたくなるのは仕方ないこと。貴族社会にとっては異端児であり、一族にとっては問題児だった隆家ではあるが、親から過保護なほどに愛情を注がれた優等生タイプの兄や姉と違い、自由な精神を自ら育んだ隆家は、自然に未来志向となったのだろう。どこか憎めない(あれほど呪詛に明け暮れた伊周も隆家のことは憎んでいない)、愛される弟キャラがぴたりとハマっていた。 弟キャラがハマるといえば、現在放送中のドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系)で竜星涼は八木莉可子とW主演を務めている。竜星涼が演じるのは、元警察官で正義感あふれる妹思いの兄・渡良瀬貴一。竜清涼は兄のイメージも強く、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』の長男・ニーニーこと比嘉賢秀役は強烈な印象を残した。 世間や社会の枠にとらわれない、周りの人に影響を与えるほどのエネルギーを解き放ち、自分の視点で今ある世界の、その先の新しい何かを見ている……そんな憎めない存在をこんなにも生き生きと演じられる俳優が他にいるだろうか。 『光る君へ』も最終回まで3回の放送となった。「刀伊の入寇」をはじめ、怒濤の展開に心を鷲掴みされることは間違いない。 参照 ※https://www.nhk.jp/p/h ikarukimie/ts/1YM111N6KW/blog/bl/ppzGkv7kAZ/bp/p8dPe9paQ8/
池沢奈々見