FRBが警戒強める、労働市場の勢いに減退の兆し-経済に影響も
(ブルームバーグ): 米労働市場が勢いを失いつつある兆候が見られており、エコノミストや一部の米金融当局者は、労働者に近く痛みが広がる恐れがあるとして警戒を強めている。
失業率が低水準から徐々に上昇し始める中、求人件数は今年に入り減少傾向が続いており、従業員の離職も減少。新型コロナウイルス禍のショックからの急速な回復を特徴付けた、歴史的に見て非常にタイトな労働環境が終わりを迎えていることが示唆される。
雇用の力強さも背景に、米経済は金融当局による積極的な引き締めをこれまで乗り切ってきた。インフレ率はなお当局目標の2%を上回っており、労働環境がさらに軟化した場合、それが急速に悪化し、経済成長をリスクにさらす恐れがある。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏は「労働市場の見通しが変化した場合、経済と金融政策の方向性に重大な影響を及ぼす可能性がある」とし、「一つ確実に言えるのは、状況は極めて急速に変化するということだ」と続けた。
フロリダ州セントピーターズバーグでヘッドハンターを務めるケリー・ボン氏は、支援を求める求職者からの問い合わせが2023年末以降に約30%増加していると語る。21、22年には1-2カ月で職を見つけることができていたが、現在では2-5カ月かかることが多いという。
「雇用主が時間をかけ、採用する人物をより吟味するようになっているのは間違いない」とボン氏。一方、職に就いている人は安定したポジションを離れて新たな機会を求めることにより慎重になっているとし、「彼らは今の市場環境で失業したくはないのだ」と語った。
米金融当局者は労働市場の状況についてなお総じて楽観的だが、リスクが高まりつつあることを認識し始めている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は6月12日、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に記者団に対し、「総じて労働市場はなお非常に強いが、1-2年前のような過熱した状態にはない」と述べていた。