中国で“無差別殺傷”頻発 地元当局が注視“8種類の「失った人」” 経済失速…閉塞感が拡大か
3)中国経済“失速”…不動産投資下落と若者の失業率から見えるもの
無差別殺傷事件が頻発する背景には、中国経済の失速があるとされる。その最大の要因は、不動産バブルの崩壊だ。不動産投資の推移を見ると、2017年から21年にかけては10%近い伸び率を見せてが、現在はマイナス10%まで落ち込んでいる。 若者の失業率も、2019年頃から上昇傾向が続いており、以前は10%前後だったのが、現在は15.4%まで悪化した。柯 隆(かりゅう)氏(東京財団政策研究所主席研究員)は、現状は統計よりもさらに深刻と指摘した。 この統計には、出稼ぎの若者の失業が含まれていない。状況ははるかに深刻だ。いわゆる最低限の社会保障、生活保障が整備されていないので、一旦負け組になってしまうと追い詰められ、人生これでもう終わりだと、極端な行動をとりやすい。これを防ぐには、カウンセリングが重要だが、カウンセリングのメカニズムが整備されていない。 阿古智子氏(東京大学大学院教授)は、中国の社会での不満の広がりを指摘する。 将来が明るくないので結婚もしない、子どもは持たないという人が非常に増えている。家も不動産も持っている友人たちも、売却するのが難しい状況だという。資産があってもそれを実際に動かすことができなくなっている中間層が不満を抱えるようになっている。今まで既得権益層や中間層は、そんなに政権を厳しい目で見ていなかったが、今はどの社会階層の人たちも、厳しい目を向けている。 末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、情報統制の限界を指摘した。 アメリカは社会の分断、日本は経済の停滞など、民主主義国家は問題が多いと言われる中で、専制国家は上手くいっているように見えた。しかし、中国は経済そのものが壁に当たっていて、全体として不満が元々たまっていたのに、再分配ができなくなってきている。こうした中、いくら情報を統制してもインターネット・SNSがこれだけ発達すると、完全に遮断することはできない。北朝鮮などでも起きていることだが、昔は知らないから、そこで頑張ることができた。しかし、今は何らかの形で情報に接することができ、中国の情報統制の限界が来ている。専制体制を引いたがゆえ、やはり壁に当たっているのだと思う。 <出演者> 阿古智子(東京大学大学院教授。専門は中国研究。香港大学で博士号を取得。中国の市民社会や政治・経済の問題に精通) 柯 隆(かりゅう)(東京財団政策研究所主席研究員。専門は中国のマクロ経済。近著に「中国不動産バブル」(文春新書)など関連は多数) 末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。永田町や霞が関に独自の情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題に精通) (「BS朝日 日曜スクープ」2024年11月17日放送分より)
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