『虎に翼』片岡凛の“怪演”でサスペンスな展開に 涼子と玉の“これまで”を知った寅子
『虎に翼』(NHK総合)第83話では、寅子(伊藤沙莉)が玉(羽瀬川なぎ)の思いを知る。 【写真】寅子(伊藤沙莉)と対峙する美佐江(片岡凛) 涼子(桜井ユキ)は母・寿子(筒井真理子)を見捨てることができず、法律ではなく結婚の道を選んだ。しかし戦時中に母が亡くなり、空襲によって執事の岸田(奥田洋平)など多くの使用人たちが亡くなった。戦争が終わると新しい憲法によって華族制度が廃止される。涼子が必死になって守ろうとしたものは「敗戦後に出来た憲法によって跡形もなく消え去ってしまったのです」と語り部(尾野真千子)は語る。 涼子と玉のこれまでを語る羽瀬川の演技に胸を締め付けられた。特に、寿子が亡くなったことを伝えた後、空襲で起きたことについて語るまでの間は、涼子が自由になることを願って自分の思いを寅子に打ち明けようとするも、つらい思い出に心が押し潰されそうになるさまがひしひしと感じられた。 「私がいなくなれば、お嬢様は自由になれるんです」 「身分からも、お母様からも解放されたのにこれじゃ……あんまりです」 玉は涙を流しながらこう語った。羽瀬川が涙を流しながら、振り絞るように思いを打ち明ける演技からは、玉がどれだけ涼子を大切に思っているか、そして涼子が自由になれないのは自分のせいだと責め続けてきたかが伝わってきて切ない。玉の覚悟が十二分に伝わってくるから、寅子がすぐに返事をすることができないのも当然だ。 ただ、涼子が玉に縛られているとは思えない。涼子はかつて玉に深い感謝を述べていたし、涼子は玉がいつもそばにいてくれたことで心強かったのではないだろうか。第83話では玉の思いが語られた。続く回で、涼子の口から玉への思いが語られ、2人が真に第二の人生を歩むことを願ってやまない。
寅子(伊藤沙莉)の前で赤い腕飾りを引きちぎった美佐江(片岡凛)
玉の思いが胸を打つ回となった第83話だが、物語後半では緊張感の漂うサスペンスな展開に。 父・森口(俵木藤汰)とともに寅子のもとを訪れた美佐江(片岡凛)は、寅子に赤い腕飾りを手渡し、「先生は、私の特別です」と言った。そんな折、寅子は傷害事件に関わっている元木(山時聡真)や自首してきた若者が、男女問わず赤い腕飾りをしていることを知る。赤い腕飾りという共通点だけでも嫌な予感を覚えるが、寅子が当初から引っかかっていた美佐江の「特別」という言葉がさらに不穏さを掻き立てる。 美佐江は志望大学の相談のため、再び寅子のもとを訪れた。美佐江は事件とつながっているのか。寅子が美佐江に赤い腕飾りについて追及すると、美佐江は突然赤い腕飾りを引きちぎり、「ごめんなさい。用事を思い出したので、今日は帰りますね」と礼儀正しくその場を立ち去った。 突如と赤い腕飾りを引きちぎったことも驚きだが、その前後でほとんど表情を変えず、品性のある佇まいのままだったことがかえって恐ろしい。美佐江を演じる片岡の、引きちぎる寸前に見せた面持ちと、その後寅子に笑顔を向ける直前の表情の冷たさに痺れる。 美佐江は事件に関与しているのか。涼子と玉の物語と同様に、目が離せない展開が続く。
片山香帆