ドラフト裏話「え、調査書1枚だけ?」阪神育成3位に涙ぐむ女性、早川太貴も目を赤くして「悔しいと思いますが」くふうハヤテ会見に記者が密着
「いやー、良かった」涙ぐむ女性も
下川の指名から十数分後、会議開始から約3時間が過ぎた頃だった。 「阪神タイガース、はやかわ」 ワッと歓声が上がり、あとは聞こえなかった。早川と池田社長が抱き合い、控室へと駆け出していく。 報道陣はほとんどが地元メディアだ。球団スタッフが会見場の準備を始めると、メディアも机を動かしたり手伝い始める。「いそいそと」という表現がぴったりだ。 「いやー、良かった」 筆者も心からそう思った。ドラフト会議の全プログラムが終了し、番組が終わると早川と池田社長が会見の席に座った。涙ぐんでいる女性もいる。 「もう呼ばれないかと思ったけど、阪神さんから指名されて本当にうれしいです。育成ということなので支配下目指して頑張ることになると思います。周囲の方々に支えていただき、全然だめだった開幕戦から(早川はオリックス戦に先発し4回自責点5で敗戦投手)、徐々に投げられるようになりました。首脳陣やスタッフ、そして一緒に努力した仲間のおかげです」 早川はとつとつと話した。それに続いて池田社長もこう語る。 「彼は夏場に成績が落ちました。猛暑でバテてしまったのですが、北海道出身の早川にとって、本州の夏は初めての体験でした。それを乗り越えて指名されたんです。僕は指名されると確信していました」 実は早川は昨年、社会人のウイン北広島時代にもプロから声がかかったが指名されなかった。その悔しさもあり、ファームリーグにチャレンジしたのだ。 「昨年11月のうちのトライアウトに、早川が参加してくれたんです。いったいどこで聞きつけたのかと思いますが、本当にうれしかったですね」
「悔しいと思うんですが…」早川の目が一瞬赤く
池田社長に「杉原行洋オーナーにも連絡したか?」と聞いた。 「もちろんです。オーナーはもともと阪神ファンだったので大喜びでした。うちのホームユニフォームの縦じまもそれにちなんでいるんです」とのことだった。 早川の目が一瞬赤くなったのは、宮崎のフェニックスリーグでプレーしているチームメイトからのSNSについて話した時だった。 「本当は仲間もプロ野球に行きたいはずで、悔しいと思うんですが、すごく温かいメッセージをくれて、本当にうれしかった」 市役所職員からのプロ入りは元大洋・高木由一以来となる。あとは広島県庁職員から広島カープ入りした広岡富夫がいる。巨人の名遊撃手・広岡達朗の兄だ。 気が付くと午後9時を回っていた。
悲喜こもごもの4時間…しかしここからがスタート
筆者が取材した選手では、今年のリーガサマーキャンプに参加していた北星学園大附属高の投手・石田充冴が巨人4位で、帯広農高の投手・澁谷純希が日本ハムの育成2位で指名された。 鹿児島の薩摩おいどんカップで「今年の4番は彼です」と慶應義塾大の堀井哲也監督が断言していた清原正吾の名前はついに呼ばれなかった。その清原に対して、くふうハヤテが獲得に乗り出すとの報道もある。 「悲喜こもごも」の4時間が終わった。しかし早川にとっても、この日指名された全選手にとっても、これがスタートラインなのだ。 今年もいいものを見せてもらった。満足感と共に会場を後にした。 〈ドラフト特集:つづく〉
(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)
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