東京・品川周辺の再開発加速 リニア開業、地下鉄延伸見据え〝世界のゲートウェイ〟目指す
JR品川駅(東京都港区)と周辺の開発が加速している。2030年代にも見込まれるリニア中央新幹線の品川-名古屋開業、東京メトロの延伸などを受け、再開発が進展。羽田空港とのアクセスが良いこともあって、海外からの来客が最初に訪れる大規模な街「日本の玄関口」としての性格を強めており、企業の本社移転も進んでいる。 【写真】高輪ゲートウェイシティの街びらき会見で、記念撮影する喜㔟陽一社長ら。両端は街中で稼働する予定のAI(人工知能)ロボット JR東日本は30日、東京都内で記者会見を開き、品川駅北隣の高輪ゲートウェイ駅(港区)西側の再開発地域「高輪ゲートウェイシティ」(約9・5ヘクタール)の街びらきを、来年3月27日に行うと発表した。 来春は駅正面の、オフィスや商業施設が入る2棟が先行オープン。26年春にかけて高層住宅や文化施設が続いて開業する。オフィスが入る棟にはスタートアップの支援拠点を設け、街全体をさまざまなデータを利活用するなど社会実験の場としても活用する。 喜㔟陽一社長は「ここが日本や世界各地から人を迎える玄関口になる。100年先の心豊かな暮らしをつくるための実験場としたい」と意気込みを述べた。 JR東ではこのほか、高輪ゲートウェイ駅から品川駅までの歩道の整備も進める計画。品川駅直上では京浜急行電鉄とも共同で、高層ビル建設など再開発を進めている。また、品川駅南側に位置する京急北品川駅(品川区)周辺では今年1月、日鉄興和不動産や三菱地所など13社が、13・5ヘクタールの土地を再開発すると発表した。 一連の投資は地域の将来性に由来する。34年以降にJR東海のリニア中央新幹線は品川-名古屋間が開業。また東京メトロは南北線を30年代に白金高輪-品川まで延伸する計画で、品川から六本木など都心部に出やすくなる。 ■トヨタが「新東京本社」 こうしたなか、品川周辺に本社を移転する企業も続出。KDDIは25年春をめどに、高輪ゲートウェイシティに本社を移転。トヨタ自動車は京急と共同で品川駅の西口地区の再開発を進めており、29年度に完成するビルに「新東京本社」が入居する。 三井住友トラスト基礎研究所の調査によると、東京都心5区の主要企業本社立地は10年から24年の間、1万404社から1万3345社に拡大。24年は千代田区の「丸の内・大手町、霞が関・内幸町」のエリアが1395社でトップだが、港区の「海岸・芝浦・品川駅港南口」は特に勢いが強く、10年の478社から24年は849社に増えており、伸び率では75%と最も高い。再開発の進展で今後、ペースが速くなる可能性もある。(織田淳嗣)