「僕が見ていた世界は地獄のようでした」韓国のBTSが世界的スターになれた秘話 逆境バネに成長 〝兵役の壁〟乗り越える戦略も
大きな危機だったが、メンバーは表では笑顔で耐えた。ARMYは、対抗するようにグループやメンバーへの愛をネットで拡散、かえって一致団結したという。桑畑さんは指摘する。 「弱さもためらわずに見せる姿勢が共感を呼び、ファン自身がメディアとなって拡散、世界的人気につながった面があると思います」 メンバーがこれまでの歩みで内面に抱えていたつらい気持ちや葛藤は、オフィシャルブックで、これまでにないほど率直に明かされた。 SUGA(シュガ)さんは数年もの間、中傷にさらされた当時を振り返り、こんなことを書いている。 「僕が見ていた世界は、ひとことで言うと地獄のようでした」 J―HOPE(ジェイホープ)さんは、米国での人気に本格的に火がついた2018年、あまりの多忙さと、アジア出身の音楽グループとして前例のない成功を手につかもうとしているプレッシャーから、解散の危機を迎えていたともつづっている。
「BTSとして活動していく中で、本当に初めて、続けていけるだろうかと思うほど深刻な雰囲気でした」 赤裸々な心情がつづられていることに、翻訳した桑畑さんも「ここまで書くのか」と驚いたという。関連する動画やサイトを見たことで「そうした感情が、いかにその時々の作品に昇華されているのかも分かりました」。 ▽「活動休止はプラスになる」 世界的スターとなったBTSだが、また新たな壁が立ちはだかった。韓国の兵役だ。年齢制限があるため、メンバーは順次入隊。昨年6月、グループ活動の一時休止を発表した。 K―POPの男性グループにとって、兵役に伴う芸能活動の空白期間は大きな問題だ。ファンに長期にわたって姿を見せられないために人気が失速したり、メンバーの足並みが乱れて脱退や解散に至ったりすることもある。 「でも、BTSのメンバーはSNSコンテンツをうまく生かし、自分たちの『今』を発信できているように見えます」と桑畑さん。ファンとアーティストがオンラインで直接交流できるプラットフォーム「Weverse(ウィバース)」で、入隊したメンバーのJIN(ジン)さんやJ―HOPE(ジェイホープ)さんも時々、他のメンバーの投稿にコメントを付けている。