「僕が見ていた世界は地獄のようでした」韓国のBTSが世界的スターになれた秘話 逆境バネに成長 〝兵役の壁〟乗り越える戦略も
「想定外だったけど、すごいアイデアだと思った。米国にもラテン系の住民は多い。北米市場へと続く道を組んだのでしょう」 ▽弱さも見せ、乗り越えた中傷 アジアを飛び出し、世界でも爆発的な人気を得た要因は何か。SNSの戦略的な活用を挙げるのは、オフィシャルブック「BEYOND THE STORY」(カン・ミョンソク、BTS著)の日本語版を監訳した桑畑優香さんだ。 BTSが最初にSNS戦略に手応えを得たのは、海外進出する前だという。 BTSは、韓国でデビューしてすぐに爆発的に売れたわけではない。所属する芸能事務所HYBEは当時、規模が大きくなく、資金や影響力もなかった。地上波テレビへ売り込むことも簡単ではない。代わりに、BTSのメンバーたちは、ブログやユーチューブに自分の言葉で率直な心境をつづったり、飾らない姿を撮影した動画コンテンツを投稿したりすることをデビュー前からやっていた。SNSでは、初期段階から「テレビ番組に出たら新たにフォロワーを何人増やす」といった具体的な目標も決めさせていたという。
これが世界規模のファン形成に役立った。桑畑さんが取材したサウジアラビアの女性は、BTSがデビューした2013年からARMY(アーミー、ファンの通称)になったという。SNSで偶然流れてきた動画を見ているうちに、すっかり魅力にハマってしまったのだそうだ。 ▽前例のない成功を手に前にして迎えた解散の危機 SNSは、中傷を乗り越える過程でも威力を発揮した。 売り上げが上昇カーブを描き始めた2015~17年、BTSはインターネット上で大規模な誹謗中傷に見舞われた。競争の激しいK-POPの世界で、中小事務所という不利な環境出身にもかかわらず、頭角を現し始めたグループに、他グループのファンの嫉妬や疑念もあったのか「たくさん売れたのは買いだめをしたからだ」などと、根拠のないバッシングが発生した。 中には、BTSをアイドル業界の悪とでもみなすかのように、過去の言動を脈絡なく切り取って、「死ね」などと攻撃する投稿が共有されることもあった。