収穫待つ畑を奪った大雨 発災から2週間 山形県最上地方ルポ
秋田、山形両県を襲った大雨から8日で発災2週間を迎える。田畑や農業施設に被害が多数発生した山形県最上地方でも、何とか収穫につなげようと懸命の農作業が始まった。「野菜は(成長を)待ってくれない」。田畑に土砂が流れ込むなどの被害を受けながらも、防除や管理に汗を流す農家の姿を追った。 【画像】大雨被害に負けず、キュウリの誘引に汗を流す安彦さん 顔中から噴き出す汗を拭いながら、畑で薬剤を散布する。足元には、沢から流れ込んだ握り拳ほどの大きさの岩石が転がっている。同県最上町でアスパラガスを1アール弱栽培する高橋香さん(58)の畑には、夏の出荷最盛期を目前にして土砂が流入し冠水した。収量は3分の2程度に落ち込む見通しだ。 大雨の後、避難場所から戻って惨状を見た。「もうやめる」。思わず言葉が出たが、JA職員の支援も受け、営農継続を決めた。 アスパラガスは、収穫期を終えた秋に苗を刈り取るが、根を残して来年の春芽を育てる。この時期の防除が来季につながる。成果を信じて高橋さんは噴霧器のノズルを握る。 上流に向かう道を進むと、人が抱えられないほど太い流木や土砂に覆われた水田が何枚も見え始めた。同県鮭川村の曲川地区。濁流に襲われた川沿いの田畑は全滅した。
辛うじて残ったキュウリ畑
安彦泰見さん(74)は、田畑約3アールが土砂をかぶった。育苗ハウスも約1メートル浸水し、トラクターなどの農機も水に漬かった。「今年は米価に期待していたのに売り物がなくなった。笑えないよ」 辛うじてキュウリ畑などは残った。早朝や夕方は収穫、日中は摘芯や誘引を行う。水道の復旧は見通しが立たず、風呂にもなかなか入れないが、キュウリの生育を励みにする。 同村では6月、地域や部会の枠を超えて情報交換を図ろうと、40代以下の若手農家による「青年農業者の会」が立ち上がったばかり。自宅を失ったメンバーもいるが、「村から復活ののろしを上げよう」と結束は固い。 発足に立ち合ったJAおいしいもがみ鮭川支店の石山賢一支店長は「彼らが村の農業を元気にすると信じている」と期待を込める。 (山口圭一)
日本農業新聞