60歳以上の3人に1人は“借金生活”の日本 …定年後に必要なお金「1億円でも足りない」といえるワケ【FPが解説】
“定年前”と“定年後”の生活費…なにが違う?
しょせんは、お隣の家計簿です。「わが家はここの部分をもっと使っているなあ、使っていないなあ」というのも大切ですが、こういう統計の資料を見ていく時に一番大事なのは、どういった傾向があるかということです。そういう目で見ていけば、とても重要なことにお気づきになるはずです。 そうです。じつは、定年後の生活費は定年前とあまり変わらないのです。 定年前(55~59歳)の支出が約34.3万円なのに対して、定年後(60~64歳)の支出は約30.8万円と3.5万円ほど減っていますが、大きく減ったのは交通・通信費、教育費、その他の支出の3つに絞られます。 教育費は子どもの年齢的な問題でしょうし、交通・通信費、そしてその他の支出も、会社を辞めたことによって通勤やお付き合いが減ることによるものだと考えられます。 つまり、生活費はほとんど変わりません。 私たちは、心のどこかで、「定年後の生活費は今より減るんじゃないか」と考えがちです。ですがこの表が示す通り、食費や水道光熱費、住居費などの生活費の中心はあまり減ることはないのです。 むしろ、子どもが独立して世帯の人数は減っているのに生活費は減っていないということは、経費は増えているのかもしれません。 先ほど、皆さんの家で毎月どのくらいお金を使っているかを出してもらったのは、出てきた生活費が定年後もほぼ確実に必要になってくるということを分かっていただきたかったからなのです。 では、定年後も生活費がほとんど変わらないという前提で計算すると、どのくらいのお金が必要なのでしょうか? 先ほどの表を参考にすると、次のような計算になります。 31万円×12ヵ月×22年(平均余命)=8,184万円 しかし、この計算は、男性の平均余命に合わせて出した数字です。実際には、女性はさらに6年平均余命が長くなります。 つまり、夫婦が同級生でも、奥様が1人で生きていく期間が6年できることになります。 そこまで考慮すると、定年後に必要なお金は、1億円に近い金額になるようです。 皆さんに、定年後の期間の長さに実感を持ってもらおうと思ったのですが、1億円なんて数字が出てくると、よけいに想像のつかない世界になってしまいました。 しかし、定年後に必要なお金はまだまだこれだけではありません。
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