スーパーフォーミュラ、もし半数が海外戦になったら……どんなカレンダーになる?|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
スーパーフォーミュラでは2025年に韓国のインジェで久々の海外戦を開催する計画がありましたが、これに関してはほどなくして頓挫してしまいました。しかしシリーズのプロモーターであるJRP(日本レースプロモーション)の上野禎久社長は、日本以外のアジア地域への拡大を目指すスーパーフォーミュラが、この一件で立ち止まることはないと明言しています。 【ギャラリー】F1ドライバーのオリバー・ベアマン、スーパーフォーミュラ&鈴鹿を初走行 そこで、スーパーフォーミュラがアジアに本格的に進出した場合の“ドリームカレンダー”を作ってみるのも一興であると考えました。 今回は、日本で5ラウンド、海外で5ラウンドという計10大会のシーズンを想定しています。この大会数は、上野社長が最終的な目標として掲げていたものでもあります。 日本での5大会は、単純に現在スーパーフォーミュラが開催されている5つのサーキット(鈴鹿、富士、オートポリス、SUGO、もてぎ)で行なわれるものとします。今回のメインは海外での5ラウンド。これから挙げるそれぞれのサーキットでの開催がなぜ正当なものかを説明していきます。 その前に、スーパーフォーミュラが開催できるサーキットについて簡単に説明します。スーパーフォーミュラは、FIAのグレード2以上のライセンスを持つサーキットでしか開催できませんが、アジア太平洋地域には驚くほど多くの該当サーキットがあります。中国、インド、タイ、韓国、インドネシア……さらに台湾(リーパオ・レーシングパーク)まで。少なくとも25は超えそうです。 ちなみに、今回の“アジア太平洋地域”は中東やオーストラリア、ニュージーランドは含まれていません。また、スーパーフォーミュラ単独でのレース開催が現実的ではないストリートサーキットも除外しているので、シンガポールやマカオ、インドのハイデラバードも残念ながら今回のリストには入りません。 今回選んだサーキットは、日本のファンや海外のファンによく知られたサーキットであり、これまで何らかのハイレベルなレースを開催してきた歴史があります。そのためスーパーフォーミュラのマシンが走ることには疑いの余地がないはずです。 それでは、こちらがドリームカレンダーです。 1. セパン(マレーシア)1月中旬~下旬 2. マンダリカ(インドネシア)2月上旬 (インシーズンテストを3月に実施) 3. もてぎ 4月 4. オートポリス 5月 5. 韓国インターナショナルサーキット(韓国)6月 6. 富士 7月 7. SUGO 8月 8. ブッダ(インド)9月下旬 9. 珠海(中国)10月中旬 10. 鈴鹿 11月 まず、シーズンはセパンで開幕します。これはスーパーフォーミュラ(当時フォーミュラ・ニッポン)が過去に唯一海外ラウンドを実現させたサーキットです。無難な選択ではありますが、このコースは見どころのあるレースが期待できますし、ロジスティクス(移動)面も比較的シンプルです。 セパンでレースを開催するもうひとつの利点は、スーパーGTがここで冬季テストを行なうタイミングに合わせてイベントを開催できるという点です。これはコスト削減、そして関係者の移動の負担軽減にも繋がるでしょう。 その後東南アジアはインドネシアのロンボク島にあるマンダリカに移動します。ここはMotoGPなどの2輪ロードレースの開催で知られるサーキットですが、今年はGTワールドチャレンジ・アジアが初開催される予定です。 その後は車両を日本に輸送するために長めのインターバルを取り、インシーズンテストを行なった後に国内で2ラウンド(もてぎ、オートポリス)を開催。次なる海外ラウンドは韓国の霊岩(ヨンアム)にある韓国インターナショナル・サーキットで開催されます。 霊岩では2010年代の初頭にF1が開催されていました。最近では国内のレースイベントを開催するにとどまっていますが、スーパーフォーミュラが開催するとなれば、セバスチャン・ベッテルやフェルナンド・アロンソ、マーク・ウェーバーらがタイトル争いを繰り広げていた時代を懐かしむ人たちから注目を集めることは間違いないでしょう。 そこから夏には富士とSUGOでのレースが開催された後、バーニー・エクレストン時代の晩年にF1を開催したブッダ・インターナショナル・サーキット、そして香港やマカオからもほど近い中国の珠海国際サーキットへと向かいます。 ブッダを選んだ理由は、インドがスーパーフォーミュラにとっても重要な市場であり、同国でレース開催に必要なインフラが備わった唯一のサーキットだからです。首都ニューデリーに近いというアクセスも魅力です。 珠海はコースレイアウト的にオーバーテイクが期待できるのですが、やや過小評価されている印象です。そのオールドスクールな雰囲気は韓国やブッダと好対照だと言えます。 中国であれば、上海国際サーキットで開催するという選択肢も当然ありますが、上海は現在進行形でF1を開催しているサーキットですから、現地の人たちにF1とスーパーフォーミュラを両方サポートしてもらうよう説得するのは簡単ではないかもしれません。そのため代替案として珠海を挙げましたが、珠海もかつてFIA GT選手権やA1グランプリなど、トップレベルのイベントを開催してきた実績があります。 シーズンは鈴鹿に戻ってフィナーレを迎えます。最終戦が日本の地で行なわれることは重要ですし、鈴鹿はそれにふさわしい会場だと思います。そして最終戦後にはポストシーズンテストを実施し、翌年のシーズン開幕に向けて東南アジアへとマシンを送り出すことができます。 以上がスーパーフォーミュラがより国際的なシリーズになるための案のひとつです。ただ、今回選んだサーキットはアジア地域内のグレード1、グレード2のサーキットのほんの一部に過ぎません。あなたならどのサーキットを選びますか?
Jamie Klein