道長出家、剃髪の覚悟と旅に出るまひろ。時代がいよいよ変化して、次週大宰府で何が起きるのか?【光る君へ 満喫リポート】
頼通と隆姫女王のこと
I:道長嫡男頼通は、正妻で具平(ともひら)親王の女王である隆姫女王(演・田中日奈子)と睦まじい関係を築き、子が生まれないことから、二妻を持つことを勧める周囲に反抗している様子が描かれています。 A:バックボーンはやや異なりますが、源実朝も正妻と睦まじくて、側室を持つことを拒みました。源氏の血統を自分の代で絶やしたいという考えだったともいわれますが、頼通にしても実朝にしても、その後の歴史に大きな影響を与えました。 I:是非はともかく、現代的な感覚からすると、ひとりの女性を愛するというのは素敵というか、あってしかるべきこと、という風になりますよね。このドラマでは道長はまひろだけを思っているわけですけど。 A:まあ、現代的な感覚はともかく、頼通の純愛が歴史にどう影響したかを追跡するのも一興かと思います。
今度はまひろが旅をする
I:ものがたりの最終盤になって、まひろが旅をしたいといいだします。 A:太皇太后彰子(演・見上愛)には、まひろに代わって娘の賢子(演・南沙良)が仕えることになりました。劇中の設定でいえば、賢子は太皇太后彰子の異母妹ということになります。 I:まひろから道長に、「あなたの娘」とついに告白するわけですが、賢子は要するに、自分の異母姉に仕えることになるわけですね。あくまでドラマの中では。賢子は、宮の宣旨(演・小林きな子)から越後弁という名前をもらっていましたね。 A:話は戻りますが、まひろが旅立つというこの流れ、なんかいいなと感じました。実際に紫式部は大宰府に行ったんですか? といわれると、「さあ、どうでしょう」という感じですが、『光る君へ』の世界の中では、すごく重要な旅になる予感がして、わくわくします。 I:Aさんにしては珍しいいいようですね。 A:道長とまひろの生きた時代は、宮廷内の権力闘争こそありましたが、国内は平和でした。いや、むしろ平和であったからこそ、権力闘争にうつつを抜かしていたといってもいいでしょう。都を震撼させた平将門や藤原純友の乱は道長の時代の80年ほど前の出来事でした。 I:来年の2025年はちょうど終戦80年の節目の年になりますが、道長の時代も承平天慶の乱からおよそ80年。歴史は繰り返すとはいいますが、どうなんでしょう。興味深いですね。 A:古代の日本では、唐の国が最強だった時には、その侵攻に備えて、水城を築き、瀬戸内海の各地に朝鮮式山城を築いて、国防を充実させました。この頃築かれた対馬の金田城は「この時代によくぞ」という規模の威容を今日も遺しています。訪れるのは大変ですが、一見の価値のある山城で、古代日本が大国唐と真剣に対峙しようとした心意気を感じることができます。 I:平和が続くと、ほころびがあっても気がつかないことがあるのでしょうね。 A:『光る君へ』では後半になって、伊藤健太郎さん演じる武者の双寿丸が出てきたりして、次の時代への移行期であることを感じさせます。 I:まひろは九州の地でどんなことに遭遇するのでしょうか。とりあえず、再登場ですね、周明(演・松下洸平)。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。 ●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。 構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり