主題歌担当のドラマ「クリスマス・イヴ」は「テレビの前で正座して観ていた」 辛島美登里が語った大ヒットの裏側
テレビの前で正座して見ていました
「コンビニで、どこかで聞いた感じの声だな、と思って、あ、私だ、と気付くこともありましたね。今、CDを聴くときもそうですが、『ここの音程、ちゃんと歌えてるな、良かった』と安心したりして。皆さんの日常に自然に溶け込んでいてありがたいな、とほのかな感謝を抱いたりもしていましたね」 ドラマの山場で流れる「サイレント・イヴ」。後に同じTBSドラマで緒形拳が主演した「愛はどうだ」の主題歌となった「あなたは知らない」など、いずれも効果的に使われた曲を辛島はどう聴いていたのか。 「本当に嬉しくて。本当に流れるのかしらとも思って。録画をすることもありましたが、できるだけオンタイムで見たいと思って。始まるとテレビの前で正座して観ていましたね。『本当に流れてる!』という感じでした」 娘の活躍を応援していた両親。母は「頑張りなさいね」との言葉を常に贈ってくれるものの、父からは一言もなかった。だが、寡黙な父は実家でテレビを見ていて、辛島の母に「テレビに出るわよ」と教えられると、そそくさと席を外していたという。辛島本人と同様に、大丈夫なのか、心配だと思う気持ち以外に「照れくささもあったんでしょうね」と、大正生まれの父の気持ちを思いやる。
声の大切さ
ツアーを年間数十本こなすようになり、ファンの期待に応えられているかという不安は常にあったという。売れている曲を届けることでファンに納得してもらえるとの思いがある一方で、心配だったのは、自身の喉だ。 「子どもの頃はよく扁桃腺を腫らす子で。喉が弱くて、きちんとしたボイストレーニングもしていなかったし、ツアーが初めての頃は、体調を保つのはすごく大変だな、と気付かされましたね」 今はボイストレーニングをしているが「ちょっと前まで声に関しては無頓着でした」と告白する。もともと自身を「詞曲を書く人」と捉えており、歌はその次についてくるとの考えから、極論すれば「歌はうまくなくてもいいだろう」ぐらいの気持ちですらいたという。聴く側からすれば、あれだけ魅了される声なのに、である。 「自分の作った詞と曲を再現できれば、それ(歌、声)は個性と思ってもらえれば。自分ではここがダメ、そこもダメと思うことは多いですが、それでもいい声、歌と言われるのは本当にありがたい。せめてそのレベルを維持しておかないと。私にとって歌手という肩書きは重いんですよね。でも、辛島の声で歌う曲を辛島が書いているという気持ちもあるので、自分の声に冒険させたい意欲もあるんです。それだけに自分の声を維持しなきゃと思うんです」