実は絞り込まれていた千葉、神奈川の「汚染源」…自治体研究所のPFAS調査はなぜ黙殺されたのか
黙殺されたケースは神奈川県でも
このように、自治体の研究機関が早くに汚染を確認しながら、事実上、黙殺されてきたケースはほかにもある。 たとえば、神奈川県環境科学センターは、米軍および自衛隊の厚木基地周辺の汚染について2016年に報告していた。 同センターは、2007年と2008年に、相模湾に流れ込む17河川についての調査を行っている。そこでPFOS濃度の高かった引地川に注目し、2011~2014年にかけて調べたところ、大和市環境管理センター前と福田1号橋の間で濃度が高くなっていることを突き止めた。この間には、厚木基地から流れ出る排水口があった。 それから10年。神奈川県は今年5月、同センターの報告をなぞるように、二つの地点の間で濃度が高くなっていることを確認したとする報告をまとめた。だが、その結論は次のようなものだった。 <引地川で検出されているPFOS等について原因を特定することはできませんでした> 神奈川県環境課は、高濃度が検出された地点から200メートル西にある厚木基地について「PFOS等を含む泡消火剤を保管していた」としながらも、「訓練時には使用していない」という基地側の言い分を記すにとどめ、それ以上の調査はしていないという。 具体的な汚染源が推定されているにもかかわらず、あたかも確定させまいとしているかのように映る。
東京や札幌のケースでは
似たような事態は東京都でも起きている。 東京都環境科学研究所は2008年に発表した「都内水環境における PFOS の汚染源解明調査」という論文で、汚染源として「飛行場(注:横田基地)」に言及したものの、東京都はその後、汚染源調査をしていない。それどころか、もっとも高い濃度が検出されたモニタリング井戸での測定をやめている。 また、北海道では、札幌市衛生研究所が市内の丘珠空港によるとみられる汚染について2010年に指摘していたが、札幌市はその後の調査で空港周辺を対象に入れていなかった。 北海道新聞が独自の調査を行って、丘珠空港周辺で目標値を超える濃度のPFASが検出されたと報じたのは今年7月のことだ。 同紙によると、丘珠空港近くの丘珠川(PFOS 320ナノグラム、PFHxS 1200ナノグラム)や丘珠2号川(PFOS 370ナノグラム、PFHxS 2700ナノグラム)などで汚染が確認された。さらに、空港排水からはPFOS 18,000ナノグラム、PFHxS 13,000ナノグラムなどが検出されたという。