「24時間テレビ」「セクシー田中さん」で日テレに猛烈な逆風 フジ「韓流ドラマ」抗議デモで視聴率低下の二の舞となるか
日テレへの逆風
今は日テレが猛批判にさらされている。日テレが株主でもある系列局の日本海テレビ(本社・鳥取市)の元局長が、「24時間テレビ」の募金264万円 を着服したからだ。今年は8月31日と9月1日に放送された同番組の打ち切りを求める声も多い。 お笑いタレント・やす子(26)が自分の出身でもある児童養護施設募金のために走ったチャリティマラソンも責められた。批判一色である。 「日テレはやす子のマラソンより開催中のパラリンピックをやるべきだ」との意見もSNS上には数多くあった。X(旧ツイッター)で著名人がつぶやいたことが発端だった。 しかし、これは無理である。パラリンピックは2018年の平昌(ピョンチャン)冬季大会から今回のパリ夏季大会まで、NHKと国際パラリンピック委員会(IPC)が独占放送契約を結んでいる。批判が高まると、誤解でも責められがちになる。フジもそうだった。編成面でも問題はなかったが、「(韓流ドラマを流しているから)放送法違反」などと非難された。 傷だらけになりながら放送された今年の「24時間テレビ」。だが、視聴率は良かった。個人全体が7.5%で、多くのメディアから成功と評されたフジ「FNS27時間テレビ」(7月20~21日)の個人全体4.0%を超えた。 どうして批判による悪影響を免れたのか? それは番組の視聴者層に特長があるから。チャリティ番組でソフトな内容ということもあり、この番組は10代と若い女性(F1層、20~34歳)のファンがかなり多い。一方、この番組の批判層は主に中高年と見られる。重なり合わない。だから視聴率低下が避けられた。 もっとも、番組側が油断し、再び不祥事を起こしたら、今度は10代と若い女性からも見放されるだろう。いくら視聴率を得ようが、現在の状況は瀬戸際と見るべきではないか。 日テレ全体の視聴率はいい。昨年度の個人全体視聴率は全日帯とゴールデン帯(午後7時~同10時)がトップ。CM売上高も断トツだった。 だが、今年度は批判を受けていることによる影響が出始めているようだ。7月から8月までの2カ月間、ライバルのテレ朝との全日帯の週間個人全体視聴率争いにおいて、テレ朝はトップを6週獲った。日テレのトップは3週しかない。フジの二の舞となってしまう恐れがある。 日テレには「セクシー田中さん」の問題もある。昨年10月から12月に放送されたこのドラマの原作者・芦原妃名子さん(享年50)が亡くなった件に深く関わってしまった。 影響は出ていると見る。放送中の夏ドラマ「GO HOME~警視庁身元不明人相談室」(土曜午後9時)と「マル秘の密子さん」(土曜午後10時)はヒットしているとは言いがたい。両ドラマの内容もさることながら、日テレのドラマで盛り上がろうとする機運がSNS上にないように思える。「降り積もれ孤独な死よ」(日曜午後10時半)は人気だが、これは系列の読売テレビの作品だ。 日テレは2003年に元プロデュサーが視聴率買収事件を起こし、信用を大きく落とした。だが、約10年でイメージの回復に成功した。今回はどうなるか。 高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ) 放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。 デイリー新潮編集部
新潮社