教諭と業務はほぼ変わらないのに待遇に差…深刻な欠員を補うはずの講師が登録者減で確保できず 「頼りすぎ」な教育行政の危機
教員の欠員、最多を更新
長野県内の公立小中学校、特別支援学校、高校で教員の欠員が10月1日時点で計75人となったことが27日、県教育委員会への取材で分かった。前年同月比で24人増え、県教委が統計を取り始めた2021年以降の最多を更新した。病気療養や産育休などで年度途中に生じる欠員に対し、講師を代わりに確保して埋め合わせることができない状況が続いている。 【グラフ】最多を更新した長野県内の公立学校教員の欠員
教頭や他の教員が業務を分担
県教委によると、今年10月1日時点の欠員は小学校39人、中学校16人、特別支援学校11人、高校9人。このうち高校は本年度当初に初めて欠員が出た3人からさらに増えた。前年同月比では小学校と高校が9人増、特別支援学校が6人増、中学校は同数。欠員が生じた学校では教頭や他の教員が業務を分担するなどして急場をしのいでいる。
講師のなり手不足が顕著
教員の欠員は、臨時に任用する講師を確保できないことが主な要因で生じる。従来は教員採用試験の不合格者らに講師の登録をしてもらい、必要に応じて補充していた。しかし近年は、より待遇の良い民間企業への就職を選ぶ人もいて、講師のなり手不足が顕著になっている。
呼びかけも強化しているけれど…
県教委は本年度、急な欠員が生じた小中学校に、校長や教頭などの経験者らを「欠員対策教員」として派遣する事業を拡充した。講師登録の呼びかけも強化しているが、状況は改善していない。県教委は「早期に欠員を解消できるように学校と連携して対応したい」としている。
雇用形態や待遇の改善は置き去りに
教員の欠員が増える背景には、臨時の代替教員として任用される非正規の講師が不足している実態がある。教員全体の1割程度に当たる講師に学校現場は支えられているものの、その雇用形態や待遇の改善は置き去りにされたまま。立場の不安定さから、近年は講師の登録をする人が減っている。講師の存在に頼ってきた教育行政の在り方が、教員不足を招いていると言え、対応は急務だ。
給与や研修制度などに差
講師は多くの場合、正規の教諭が産育休や病気療養などで長期休職する際の代替として、登録者の中から学校現場へ配置される。学校長の裁量で担任や部活動の顧問を受け持つケースもあり、業務内容は教諭とほぼ変わらない。ただ、県内では給与や研修制度など待遇面で差があり、基本的に教諭が長期休職から復帰した時点で契約が終了する。雇用形態は不安定だ。