「しんちゃんのおしりだけは守ると大人が円陣を組んだ」野原しんのすけ声優・小林由美子「かつてはPTAの敵と言われた作品が」
── 声優さんならではのプロの仕事ですね。『クレヨンしんちゃん』といえば、時代とともにお下品さが減ってマイルドになった印象があります。 小林さん:以前はPTAの敵と言われていた時代もありましたが、しんちゃんの自由さが子どもたちにはウケていました。時代とともにお下品さは削っていったものの、しんちゃんらしい「おしりブリブリ」や5歳児らしからぬ言動は絶対残したいというのがスタッフさんたちにはあったようです。「しんちゃんのおしりだけは絶対守る!」と、大人たちが円陣を組んで決意を固めたことがあったという話を聞いて、なんて素敵なんだと思いました。時代とともに変わっていく部分はあるにしても、子どもたちがケラケラ笑える要素は残していきたいという思いで作られていると思います。
しんのすけは自分の好きなことや楽しいことには、120%のパワーで挑むのに、興味のないことには一切やる気を見せない、とにかく自由人。でも友達や家族をとても大事にしているというのが根底にあるので、たとえ主人公とは思えない言動や行動で周りを振り回しても許してもらって、力になってもらえる。そんなしんちゃんってなんだか憧れますよね。おバカと友情と家族愛のバランスがとてもいいアニメだと思います。
■子育ては「みさえさんに救われた」 ──『クレヨンしんちゃん』のキャラクターで好きな人はいますか。 小林さん:みさえ母ちゃんにはすごく助けられました。長女のときの子育ては、とにかく育児本通りに育てなきゃいけないという謎のマイルールに陥ってしまいまして…。色々な育児本を読み漁っては、その通りにいかないと不安になっていました。もちろん育児本から得た知識も役に立っていたのですが、私の性格が良くも悪くも真面目過ぎる部分がありまして。
予定日より1か月近く早く生まれ、とても体の小さかった娘に、育児本に記載された通りの月齢のミルク量を飲ませようしていた時期もありました。今思えば、体が小さいのだからミルクを飲む量も少なくてもいいはずなのに、あの頃は「このミルク量を飲まないと死んじゃう!」と躍起になってしまい。お陰で娘は哺乳瓶やおっぱいを見ると「うわぁ…」という顔をするようになってしまいました。その後も、パッションが少々強めな娘のイヤイヤ期はなかなか激しかったのですが、思わず感情のまま怒ってしまい、その度に「あんなに怒ることなかったな」と後悔して。将来、トラウマになったらどうしようとまで悶々と考え込んでしまう日々でした。