新型クラウンの出来のよさを見よ! 「セダンは新しくない」なんて食わず嫌いは損する16代目とは??
もうひとつは、FCEVと呼ばれる燃料電池車だ。現在販売中の2代目「MIRAI」と共用のシステムで、水素を燃料にバッテリーに充電し、モーターを回して後輪を駆動する電気自動車だ。 こう説明すると、MIRAIは2020年発売だから新味にやや欠けるんじゃないかって意見が出てくるかもしれない。たしかに3000mmのホイールベースを持つシャシーを含めてプラットフォームは同じだけれど、乗り味はぜんぜん違う。 「MIRAIは走りのよさを強調するように開発したいっぽう、クラウンFCEVはソフトな乗り心地を追求しました」 トヨタでサスペンションシステムの開発を担当した技術者はそう教えてくれた。その言葉どおり、クラウンの動きはふんわりと、やや極端な表現を使うと魔法のじゅうたんに乗ったような走りを体験させてくれるのだ。 この足回りの設定はおみごと。路面の凹凸はていねいに吸収してくれるし、段差ごえでも車体が大きく動くこともないしショックを乗員に伝えることもない。ふわりと大きめの段差(たとえば車道から歩道をまたいで駐車場に入るときの段差)を越えてしまう。 かつ、モーターのトルクの制御もスムーズで、静かに力強く加速する。カーブを曲がるとき、足まわりがややソフトすぎるように感じられて不安、というひともいるようで、電子制御ダンパーを組み込んだそうだ。それも奏功していて、カーブを曲がっていくときの姿勢制御もうまい。不安感はないと思います。
HEV(ハイブリッド)でも、遮音がしっかりしていて、質感が高い。足まわりのよさはFCEVと同じだ。ただし私個人的には、モーターのスムーズな加速をはじめ、全体の調和がより強いように感じられるFCEVがいいと思った。 水素タンクを床下に収めるため、とくに後席のフロアが高めになり、走行中にもものサポートが不足してしまうのはちょっと難ありなので、後席重視のひとはHEVを選ぶといいと思う。ドライバーズカーなら断然FCEVだ。 クラウンセダンに乗ると、形態こそ従来からのセダンに準じてはいるものの、内容はしっかり新しいのに感心。新しい酒は新しい革袋に(新しい内容には新しい形態を)とは言うけれど、乗り心地や静粛性など、セダンならではのよさを十全に活かそうという点で、クラウンセダンの魅力は光っていた。 価格は、クラウンHEVが730万円、クラウンFCEVが830万円。
文、写真:小川フミオ