今月末に閉店 ようかん一筋…天保8年創業の和菓子店「断腸の思い」 名店を愛した人たちは
日テレNEWS
半世紀以上にわたり営業してきたバッティングセンターや、江戸時代から伝統を守り続ける和菓子店が、惜しまれながら、今月末に店じまいとなります。断腸の思いで決断をした理由とは…。長い歴史の中には、店の人や地元の人たちの特別な思いがありました。 ◇ 東京・豊島区にある「大塚バッティングセンター」。この場所に、軽快なバッティング音が響くのもあと1週間あまりとなりました。 学生時代に通った40代 「今月で閉店するということで、来てみようかなと」 昭和40年ごろに創業し、半世紀以上、この地で営業してきましたが、後継者不足などを理由に今月末での閉店を決めました。 この知らせを聞き、最後の思い出を作るべく、多くのお客さんの姿が見られました。手にしていたのは、バッティングをする際に必要なメダルです。 男性(30代) 「もともと持ってたんですよ。ずっと使ってなくて財布に入ってた。(店が)なくなっちゃうんで、使い切ろうかなと思って」 男性は、小学生のころから家族でよく訪れていたといいます。21日は生まれたばかりの息子と、母親らの3世代で訪れていました。 男性(30代) 「もう少し(息子が)大きかったら、一緒にできたんですけどね。大きくなるころにはないですから、それは残念ですね」 中には、約30年ぶりに駆けつけた人もいました。今は亡き、父親に連れてきてもらった大切な場所だといいます。 40代 「(父親は)最初は教えようとしてたんですよ、僕に。だけど、そのうち自分が一生懸命になってきて、1人でやってて僕が見てる…みたいな思い出があります。そのころの父親と今、同じくらいの年齢になって、そのころの自分と同じころの子どもがいて時代を感じるというか」 長くこの地で愛され、多くの人の人生に深く関わってきたバッティングセンター。残された時間まで休みなく駆け抜けます。 ◇ 江戸時代からの歴史に幕をおろす決断をした老舗もあります。 秋田・能代市にある和菓子店「熊谷長栄堂」の創業は江戸時代の天保(てんぽう)8年。名物の「東雲羊羹(しののめようかん)」一筋で製造・販売してきました。 地元の人 「30年、40年くらいは食べたと思います。残念ですよね」 ふるさと納税の返礼品にも選ばれる、地域を代表する銘菓の1つだったといいます。21日時点で、すでに店頭販売を終了。予約分の製造のみ行っています。そのため、それを知らずに訪れる人も少なくありません。 店の人 「お客さん、ごめんなさい。今、全部完売してしまって…。遠くから来てもらって、申し訳ありません」 買いに来た人 「老舗ですからね。最後だなと思って訪ねて来たんですけど」 186年続いた店を閉じるという大きな決断をしたのは、8代目の鈴木博さん(88)です。 熊谷長栄堂 8代目・鈴木博さん(88) 「断腸の思いで決めたんだけど、皆さんにご迷惑をかけまして、すまないなと思っています」 以前も兄である先代が亡くなったのを機に、店をたたもうとしたことがありました。しかし、それを引き留めたのは、東雲羊羹を愛する地元の人たちです。 「続けてほしい」という思いを受け、弟と二人三脚で店を立て直したのです。しかし、去年、鈴木さんの弟が帰らぬ人となりました。 熊谷長栄堂 8代目・鈴木博さん(88) 「機械が去年の7月から故障続きなんですよ」 さらに、設備も老朽化が進んでいたことなどから、ついに閉店を決意したのです。 それでも地元の人は「行事があるごとに買いました。東雲羊羹だけは私たちの誇りでしたから」と話します。 忘れられない思い出の味。記憶から消えることはありません。