太陽光パネルのリサイクル業者「採算とれない」…国や自治体、大量廃棄に備え体制構築急ぐ
2030年代に予想される太陽光パネルの大量廃棄に備え、国や自治体がリサイクル体制の構築を急いでいる。再資源化コストの高さがネックとなるが、膨大な使用済みパネルがごみとして捨てられないよう、リサイクルの義務化など様々な方法が検討されている。(田中洋一郎) 【グラフ】国内の太陽光発電量の推移
1枚3000円
東京電力の子会社「東京パワーテクノロジー」の川崎市内の施設では年間3000枚の使用済み太陽光パネルをリサイクルしている。
パネルの素材は6割がガラスで、ほかはフレームに使われるアルミやプラスチックなど。パネルを処理装置に投入すると各素材に分解され、砕かれた粒状のガラスがはき出される。
回収したガラスには不純物が多く、アスファルト舗装などに使用される土木資材としてしか販売できない。収入はわずかなため、リサイクルの依頼主にパネル1枚につき3000円の処理費用を請求している。ただ廃棄した場合より2倍もコストがかかり、リサイクルの依頼が来ないという悪循環に陥っている。
年間3万枚のリサイクルを目標としているが、パネル不足で稼働しない日もある。担当者の長島智広さん(46)は「高品質のガラスを回収し、付加価値の高いガラス製品に再資源化しなければ、ビジネスとして成り立たない」と語る。
太陽光パネルのメーカーでつくる「太陽光発電協会」でも、パネルのリサイクルに参入する業者が増える一方で、「設備の稼働率が低く、採算がとれない」といった声も多く聞かれるという。
大半が埋め立て
太陽光発電は東日本大震災後の原子力発電や火力発電に代わるエネルギーとして注目され、政府が12年に再生可能エネルギー由来の電気を固定価格で買い取る制度(FIT)を始めたことを契機に一気に普及した。
環境省によると、パネルの耐用年数は20~30年と長いため、現在の廃棄量は年間10万トンにも満たないが、2030年代後半以降には最大約50万トンに達する見通しだという。
現在、使用済みパネルの大半は埋め立て処分されており、廃棄量が増えれば、処分場が逼迫(ひっぱく)する事態になりかねない。リサイクル促進のため、政府は今年3月、先進的な技術を持つ業者には許可手続きを簡略化して、全国展開しやすくする新法を制定。9月からは有識者会議を設置し、太陽光発電業者らへのリサイクル義務化のほか、効率のいい回収方法や費用の徴収方法などを検討している。