「消滅可能性都市」10年後の増田レポートへの「強烈な違和感」…拭えない「上から目線」の感覚
人口ゼロサムゲームを煽る
若い女性の数で自治体の優劣が示されれば、それを解決するには若い女性をとにかく確保し、人数をそろえなければならない。この数値が示唆しているのはそういうことだ。でなければ消滅するという論理ではないか。 こうして、彼らによって示された消滅可能性自治体リストそれ自体が、まさしく人口ゼロサムゲームを煽るものだ。 人口数で自治体の優劣をつけ、それを見せつけることこそが、このレポートがいう「若年人口を近隣自治体間で奪い合う」ことを誘うものにほかならない。 10年前とまったく同じく、このレポートには矛盾したことを正面切って堂々という癖が抜けていない。読み手はこの厚顔無恥ともいえる書きぶりに、騙されてはならない。 この前編記事では人口戦略会議が発表した持続可能レポートについての考察を解説してきた。続く後編記事「女性は「地方にいろ」と言うのか…「消滅可能性都市」増田レポート最新版が押し付ける「少子化の責任」」でも引き続き解説し、これからの日本の人口減少対策について掘り下げていく。
山下 祐介(東京都立大学教授)