「消滅可能性都市」10年後の増田レポートへの「強烈な違和感」…拭えない「上から目線」の感覚
手のひらを返したようなレポート
まずは(2)子どもを産むことができる若い女性の数には地域的な偏りがある、から考えてみよう。 各地の将来人口推計を割り出すと、この先さらにその偏差が広がり、今よりも若い女性の数が半減するところが多数現れる。若い女性が減少する地域――そこはもはや「消滅」するしかない、というわけだ。 ところで、消滅可能性レポートの1ページ目には、こういう文言がある。少し長いがそのまま引用しておこう。 「各自治体の人口減少対策は、どちらかと言えば人口流出の是正という「社会減対策」に重点が置かれ過ぎているきらいがある。東京圏への人口流出の防止はともかく、若年人口を近隣自治体間で奪い合うかのような状況も見られる。こうしたゼロサムゲームのような取り組みは、結果として出生率向上に結びつくわけでなく、日本全体の人口減少の基調を変えていく効果は乏しい。」 社会減対策で人口減少対策を考えてはならない。若い人の取り合いをしても出生率の向上には関係がない――。まったくその通りである。筆者も含め、10年前、多くの人がそのように地方消滅レポートを批判した。 その批判をそのままなぞったような文章がここにはあるわけで、批判を受け入れてくれるのはよいことのように思えるが、そう言っておきながらこのレポートは手のひらを返したようにこう言うわけである。 「若年女性の将来人口を、10年経ってもう一度計算した。前回の896のうち、239は卒業だ。おめでとう。他方、あらたに99自治体が消滅可能性となり(ここには福島県の自治体も一部含まれる)、総計744である。そのうち362は、数値は改善したようだから、よしとしよう。しかし、283の自治体は悪化しているようだ。これはもう消滅するしかないぞ。どうするんだ?」 これはもちろん、筆者の解釈、意訳である。だが、この文書はそう読めるのではないか。関係者はみんなそう読んだはずである。