いらだつ海外投資家 なぜ”日本株売り”が止まらないの?
海外投資家の日本株売りが止まりません。財務省が毎週公表している「対内・対外証券投資」統計で海外投資家の売買動向を確認すると、目下のところ12週連続の売り越しを記録しており、その累計額は約7兆円と巨額です。 海外投資家の日本株買いが話題となった2013年の買い越し額が16兆円弱ですから足もとの売りは強烈と言えます。グラフをみれば一目瞭然です。
海外投資家は日本企業の姿勢に不満を持っている?!
それにしてもなぜ、海外投資家はここまで日本株の売りを膨らますのでしょうか? 理由は様々ですが、しばしば指摘されているのは以下の2つです。 ・日本株は世界景気に敏感な製造業企業を数多く含んでいるので、世界経済の回復期待が揺らぐと真っ先に売りの候補に挙がる。 ・同時に円高が進行しているので、海外投資家がドルベースで日本株を評価した場合、ダメージがさほど大きくない(場合によってはプラスのリターン)ので、早々に利益を確定できる。 これら要因が海外投資家の日本株売りを促しているのは確かですが、もちろん彼らが日本株の投資判断を下す際には、そのほかにも重要な基準があります。数多くの判断基準があるなかで筆者が注目するのは、欧米企業と日本企業の株主還元姿勢の違いです。結論を先取りすると、海外投資家は日本企業の消極的な株主還元姿勢に不満を持っている可能性が高いと言えます。 株主還元姿勢を評価する尺度に配当性向というものがあります(※本来は自社株買いも考慮すべきですが、国際的なデータ取得が難しいため、ここでは配当のみに着目)。配当性向は配当額÷純利益で計算され、(一般的に成熟段階にある企業では)高い方が株主還元に積極的と言えます。日本企業の配当性向は30%弱(直近3年平均)と10年前の20%強から上昇傾向にあります。外国人株主の存在感が増すなか、ここ3年くらいのトレンドとして「スチュワードシップ・コード策定」、「コーポレート・ガバナンス改革」など企業経営のあり方を見直す動きが活発化していることもあって、配当性向を引き上げる企業が多くなった結果と推察されます。 しかしながら、欧米企業と比較すると、そこにはまだ大きな隔たりがあります。たとえば、英国企業(FTSE100という株価指数に採用されている企業)の配当性向は70%強(直近3年平均)と、日本企業よりはるかに高水準です。英国企業は利益を溜め込む(内部留保)ことをせず、投資家に還元することを優先しています。「会社は株主のモノ」という欧米流資本主義を象徴している数字です。