水戸黄門も登山した神峰山! 世界一の高さを誇ったおばけ煙突にまつわる秘話とは
世界一の高さを誇った大煙突による煙害解決のエポック
日立市はかつては大規模な銅の鉱床として注目されていました。そこに1905年、日立製作所の創業者となる久原房之助が乗り出し大開発を行い、日立鉱山は日露戦争特需もあり日本を代表する銅鉱山の一つとなりました。そこで開発と環境の問題がクローズアップされる事象が起きます。煙害による人被害と環境破壊です。 その詳細については本稿の主旨から外れますので割愛しますが、煙害対策に当時の日立鉱山は真剣に取り組んだようです。問題は神峰山上空を流れる気流でした。銅産出のために吐き出される亜硫酸ガスを、気流の力で上空におしながすことを久原房之助以下の日立鉱山技師たちが提唱し、1914年に着工。翌1915年、ついに大煙突が完成しました。標高約380mの神峰山麓の丘に立った大煙突の高さ155.7m。世界最大の煙突です。 その気流観測のために日立が独自で気象観測所を設置し、気象による地域の経済活動と住民の健康への指針の役割を果たしました。神峰山頂の観測所はすでに閉鎖されていますが、防災無線基地として機能しているそうです。ちなみのこの大煙突の一連の歴史について、日本山岳小説の第一人者である新田次郎氏が「ある町の高い煙突」という作品で登場人物や企業をフィクションとして上梓されています。またこの小説をベースに映画化もされました。 冒頭にも記したように神峰山の標高は598m。大煙突の頭頂部は丘の標高と足すと535.7mです。目と鼻の距離に立ち上がる煙突は、当時の住民からは「おばけ煙突」と言われたそうですが、黄門様ならなんとおっしゃったことでしょうか。残念ながら、この大煙突はを今では見ることができません。1993年(平成5年)に約1/3を残して倒壊してしまったそうですが、煙突としていまだに活躍しているそうです。ハイキングルート上には大煙突展望台も設置されているほどのアイコンでもあります。
ソトラバ編集部