【毎日書評】好きなところで、誰とでも働けるようになりたいなら「バリューのことだけ考えろ」
凡事徹底により、信頼を積み上げる
クライアントからの信頼を獲得する道に王道はなく、誰も思いつかないようなイノベーティブなアイデアで信頼が生まれるものでもないと著者は断言しています。なによりも、「着実に仕事をこなすこと」こそが信頼を一歩一歩積み上げていくのだと。 たとえば、ミーティングが終わった後、クライアントにフォローアップのメールを必ずする。会議には必ず10分前には到着し、準備をする。 接待の際も同様で、私が日立時代に学んだのは、指定された時間の30分前に到着し、待つことだった。「待たせてはいけない、待つのが仕事だ」と教えられた。立場が上になった今、その教えの意味がよくわかる。(63~64ページより) それでも、どうしても約束の時間に遅れてしまいそうだというケースもあることでしょう。そんなときは、「相手にどう伝えるか」に気を配るべきだといいます。なんらかの事情によって遅刻する可能性が予見できる場合は、事前に相手に連絡をしておくことが大切であるということです。 もし連絡が当日になってしまったとしても、「いま炎上してしまいまして」というように途中経過を伝えることは忘れずに。そうするだけでも、信頼は保たれる可能性があるからです。しかし現実的には、細かな配慮を欠くことで、無駄に信頼を失っている人が多いと著者は指摘しています。 また当然のことながら、どんな状況であろうと嘘をつくのは絶対にNG。嘘で失われた信頼を取り戻すことは、限りなく困難であるからです。グレーゾーンの表現は嘘ではないかもしれませんが、とはいえ、どんな小さなことでも嘘はつくべきでないのです。 くだらないこと、言われるまでもないことと思われるかもしれないが、凡事徹底が信頼に直結するのだ。(65ページより) たしかに、当たり前で忘れてしまいがちなことにこそ本当に重要であるのでしょう。(63ページより)
地頭がいいからといって、仕事ができるわけではない
コンサルの現場ではよく、「地頭のよさ」が話題に上るのだそうです。近年は一般的にも使われるようになったそのことばに明確な定義はありませんが、著者はこれを「運動神経」と捉えるようにイメージしているのだといいます。 思い返してみてほしい。幼稚園の頃から飛び抜けて足の速い児童がいたはずだ。運動神経が抜群で、どんなスポーツをやらせてもこなしてしまう子供がいるだろう。その脳みそ版とでも呼ぶべきものが「地頭」である。本人の努力なしにそもそも秀でた脳みそを持っている人たちのことを「地頭のいい人」と呼んでいるだけだ。つまりは脳の才能の話である。(68ページより) つまり、「地頭のよさ」が優れているだけでは仕方がないということ。むしろ天から授かった部分は諦め、努力でカバーできる部分に目を向けたほうが生産的だと著者はいうのです。たしかにそのとおりかもしれません。 もちろん大谷翔平やイチローに代表される超一流選手の場合は、才能と努力とのかけ算によってあのような境地に達したのでしょう。そこに疑いの余地はありませんが、大谷から学ぶべきは天才性の部分ではなく、練習や食事など、彼のストイックな“努力の部分”だということです。 そもそも地頭がいいからといって、仕事ができるわけではない。ましてや、地頭がいいからといってクライアントに信頼されるわけではないだろう。表面の化けの皮はすぐに剥がされる。むしろたとえばせっかくブランドがあるのに「東大のくせに」と揶揄されてしまう方が損だ。(68ページより) だからこそ、本書のテーマとなっている「バリュー」を出すうえでも地頭のよさは関係ないのだといいます。いいかえればバリューは才能に関係のないもので、すべてのビジネスパーソンにチャンスが開かれているというわけです。(67ページより) 本書で明かされている思考やノウハウは、コンサルタントとして突き抜けた評価を得たいという読者の指針となるだけでなく、ビジネスパーソンとして活躍を目指すあらゆる人にも役立つだろうと著者は述べています。そんな本書を通じてバリューの価値を再認識すれば、自身のビジネスをよりよいものへと昇華できるかもしれません。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: SBクリエイティブ
印南敦史