【海外F1記者のコラム】去り行くリカルドに”贈る言葉”がないのは、あまりにも寂しすぎる……陽気なオージーの輝かしくF1キャリア
■リカルドの輝かしいキャリア
2015年はマシンの出来が良くなく、チームメイトのダニール・クビアトにポイントの面では敗れたものの、予選では12対7で勝利した。ただその翌年、リカルドには試練が訪れた。マックス・フェルスタッペンがレッドブルに”昇格”したのだ。 当時のフェルスタッペンはまだ荒削りではあったが、レッドブル加入初戦のスペインGPで初優勝を手にするという衝撃の活躍を見せる。それでもリカルドはマレーシアGPでの優勝も含む8回の表彰台を獲得し、フェルスタッペンに50ポイント以上の差をつけた。翌年もリカルドが優勢。後に多くのドライバーがフェルスタッペンのチームメイトを務めたが、2016~17年のリカルド以外にフェルスタッペンを上回ったドライバーはいない。 ただ2018年には2勝を挙げたリカルドだったが、ポイントの面ではフェルスタッペンに先行されてしまうことになり、翌年からルノーへ移籍することになった。 当時のルノーはパフォーマンス的には優れず、リカルドも苦戦。2020年にはルノーに久々の表彰台をもたらしたりしたもののそれが精一杯。2021年からはマクラーレンに移ることになった。ただこのマクラーレンも、優勝を狙えるような状況ではなく、イタリアGPで勝利したもののそれ以外に目立った成績を残せず低迷。2022年限りでマクラーレンを離れ、レッドブルにサードドライバーとして戻ることになった。 2023年にはシーズン途中でアルファタウリのレギュラーシートに復帰。アルファタウリはトロロッソの後継チームであり、まさに”カムバック”ということになった。 しかしチームメイトの角田裕毅にまったく太刀打ちできず、さらにオランダGPでクラッシュした際に手首を骨折してしまう。その間、代役を務めたリアム・ローソンが好パフォーマンスを発揮したことで評価を上げたのは皮肉な話だ。2024年も角田の後塵を拝することが多いまま、シンガポールGPまでを戦うことになった。 特にこの1年半、リカルドが調子を取り戻せなかったのはまことに残念なことだ。彼の陽気な性格とカリスマ性は、多くのファンの心を掴んだ。そしてレッドブルの低迷期を支え、10年近く母国オーストラリアの期待を背負い続けた。 確かにここ最近は期待されたようなパフォーマンスを発揮できなかった。そのため、彼がグリッドに残るべきだと断言するのは難しい。だからと言って、彼のキャリアが祝福されないというのは疑問だ。 彼はファンファーレに飾られることもなく、引退に向かって歩み去ろうとしている。彼が活躍していた初期は、バーニー・エクレストン時代の、F1パドックがまだ静かだった頃だ。その中で活気に満ちた存在だったリカルドには、それに見合った賞賛を贈る必要があるはずだ。
Jake Boxall-Legge