開催迫るG20大阪サミット、G7とは何が違う? 坂東太郎のよく分かる時事用語
「G7」との違い
G7とは上述した7カ国による協調体制です。第二次世界大戦後、世界はアメリカを中心とする資本主義陣営(西側)と旧ソ連を盟主と仰ぐ共産主義陣営、および双方に属さないという意味での第三世界と主に経済システムの違いで分類されてきました。 うち西側を支えてきたのが米ドルのみ金(ゴールド)と確実に交換できる(兌換)「ブレトンウッズ体制」でした。しかしこの体制は、1971年にアメリカが交換を停止し(ドル・ショック)、73年に今へつながる変動相場制へと移行したことで終了。同年の第1次石油危機もあいまって激しい混乱が西側を襲います。そこでアメリカへの過度の依存をやめて西側の経済規模の大きな国が協調して安定化をめざす機運が生じ、75年に6カ国の首脳がパリに近いランブイエに集まり、第1回先進国首脳会議(ランブイエサミット)が開催されます。2回目からカナダが加わり現在のG7がそろったのです。 その後、91年のソ連崩壊前後に進んだ東側の崩壊、今世紀に入って第三世界の中国の著しい経済伸長という変化もあいまってG7だけで世界経済の秩序を保つことが次第に難しくなってきました。そこでG20を重視する素地が固まったのです。
G20大阪サミットの概要
6月28日と29日、大阪市の大阪国際見本市会場(インテックス大阪)で開催されるのはG20の花形ともいえる首脳会議です。メンバー国に加えてオランダ、シンガポール、スペイン、ベトナムの4カ国やASEAN、APEC、アフリカ連合(AU)の各議長国を招待するほか、国際機関としてOECDも参加します。 さらにブレトンウッズ体制の担い手として発足した国際通貨基金(IMF)と世界銀行も招かれているのです。国際連合システムからは本体と並んで専門機関の国際労働機関(ILO)と世界保健機関(WHO)、関連機関の世界貿易機関(WTO)も個別に加わります。他にも国際金融の一端を支える金融安定理事会(FSB)やアジア開発銀行(ADB)など。金融関連をはじめとする主たる国際的な組織が勢ぞろいする様相です。 首脳会議に先立ち、G20発祥の財務大臣・中央銀行総裁会議が福岡市で、貿易・デジタル経済大臣会合(昨年に開設)が茨城県つくば市で、持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合が長野県軽井沢町で、農業大臣会合が新潟市で、それそれすでに開催されました。 財務大臣・中央銀行総裁会議は「貿易と地政学的リスクが高まっている」との共同声明を採択。貿易・デジタル経済大臣会合も「貿易上の緊張に対処する必要性を確認した」と似た表現で声明を出しました。いずれも目下最大の不安材料である米中貿易摩擦が念頭にあるのは明らかですが、摩擦に拍車をかけているのが関税の掛け合いという保護主義の典型であるにもかかわらず「保護主義と闘う」といった表現は避けられました。声明は通常、トップ会談である首脳会議に反映されるので、議長国日本がどこまで踏み込んだ首脳宣言をまとめ上げられるのかが最大の焦点でしょう。 G7(8月24日~26日)より前にG20首脳会議が開かれるのも異例です。ふつうはG7で骨格を固めてG20に臨むものなのですが、今回は逆。G7はおおむねアメリカの友好国で構成されていて、貿易摩擦の当事国たるアメリカの、というかトランプ大統領の出方を占う絶好の機会になるだけに、G7という場での瀬踏みがない状態での開催が不安要素となっています。 他の議題としては2001年開始のドーハラウンドのメドが一向につかず機能不全とまで酷評されているWTO改革やイランを巡る米中ロの思惑、地球温暖化対策としてまとまった後にアメリカが離脱したパリ協定の取り扱いなども注目されそうです。