国内初「RSウイルス」ワクチン発売・接種開始、全体の有効性82.6%
乳幼児や高齢者が感染すると重い肺炎になる可能性がある「RSウイルス感染症」について、ワクチンの発売と接種が始まりました。この内容について中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
発売・接種開始されたワクチンとは?
編集部: 国内で初めての発売・接種となるRSウイルスへのワクチンについて教えてください。 中路先生: RSウイルス感染症のワクチンの発売・接種は、今回が初となります。発売・接種されるのは、グラクソ・スミスクライン社が開発したRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」です。このワクチンの対象は、60歳以上となります。2023年5月、世界で初めてアメリカで承認され、その後、ヨーロッパ、イギリス、カナダでも承認されています。日本では2023年9月に承認されています。 このワクチンは、組換えサブユニットワクチンと呼ばれるタイプのワクチンで、臨床試験での全体的な有効性は82.6%で、併存疾患のある人では94.6%と報告されています。副反応は、注射した部位の痛みや疲労、筋肉痛、頭痛が多くみられたとのことです。1回の筋肉内接種で用いることになり、接種費用は医療機関によりますが1回あたり2万5000円前後となる見通しになっています。任意接種のワクチンであるため、接種に必要な費用は原則個人が負担することになります。 グラクソ・スミスクライン社は、「高齢者や基礎疾患のある人において、RSウイルス感染症は疾病負担も大きく、また特異的な治療薬もないためワクチンによる予防が重要と考えている」と述べています。さらに「より多くの人々をRSウイルス感染症から守るためには、1人でも多くの人にワクチンを届ける必要があり、そのためには公費助成や早期の定期接種化が望まれると考える」ともコメントしています。
RSウイルス感染症とは?
編集部: RSウイルス感染症について教えてください。特に、今回のワクチン接種の対象となった高齢者に関する情報を教えてください。 中路先生: RSウイルスは、特に乳幼児期において非常に重要な病原体とされています。母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、生後数週~数カ月の期間にもっとも重症な症状を引き起こすことになります。 成人の場合は通常、重症化することなく自然に回復することが多いですが、慢性呼吸器疾患や心疾患などの基礎疾患を持つ人や高齢者への感染では、入院を要するような症例もあります。肺炎にまで至ったようなケースでは、死亡退院の率はインフルエンザに匹敵するというデータもあります。介護施設での集団発生も多く、高齢者への対策の重要性も認識されています。 RSウイルス感染症の流行は、夏に流行がみられる沖縄以外の多くは秋~冬になります。ただ、RSウイルス感染に関するデータのほとんどは小児科定点からの報告になるので、高齢者の患者発生動向に関する正確な知見は不足しているとされています。