日本では紙のレシートはなくならない…プリンター需要増、セルフレジ普及加速が追い風に
日本では紙のレシートはなくならない―。昨今、飲食店でテーブルオーダーシステム、スーパーやコンビニエンスストアといった小売店でセルフレジの導入が進む。これを受けて需要が増加傾向にあるのがレシートプリンターや、厨房(ちゅうぼう)内で使うキッチンプリンターだ。背景には人手不足や人件費の高騰があり、業務効率化の観点で取り入れる企業が多い。ペーパーレスの潮流に伴ってオフィスでの印刷量は縮小傾向にある中、店舗向けは底堅さが目立つ。(高島里沙) 【グラフ】レシートプリンターの出荷推移・予測 調査会社の中日社(東京都台東区)によると、国内におけるサーマルレシートプリンター(完成品の販売時点情報管理〈POS〉プリンター)の出荷量は、23年度が22万1800台、26年度は23万900台の見込みで、右肩上がりで推移する。「アイパッド(iPad)」などのタブレット端末やスマートフォンをPOSレジに用いるモバイルPOSが普及したことで、完成品のPOSプリンターの使用が増えたことが背景にある。 また人手不足の影響で、セルフレジやセルフオーダー機といった端末の普及が進んでいる。従来はPOSレジに組み込まれるタイプのレシートプリンターが主流だったが、メンテナンスも容易な完成品のPOSプリンターが多く使われるようになっている。23年度は部材不足の影響が薄れてきたことや、インバウンド(訪日外国人)需要が回復してきていることから前年度比微増となる見通しだ。 22年度のサーマルレシートプリンターのシェアは数量を伸ばしたセイコーエプソンが首位となり、2位はシチズン・システムズ(東京都西東京市)、3位はスター精密だった。その後にセイコーインスツル(千葉市美浜区)、富士通アイソテック(福島県伊達市)が続いた。 セイコーエプソン傘下のエプソン販売(東京都新宿区)は、飲食店やアパレルなどの小売店向けにレシートプリンターを販売する。23年度の需要は旺盛だ。軽減税率の適用で顧客が一斉導入に動いた19年に迫る勢いがあったという。部品不足による受注残の解消に加え、一時はコロナ禍で停滞していた流通・小売業のデジタル変革(DX)投資が再開し、大手企業を中心に反動増も出ているとみられる。 また飲食業では新店舗も増えており、需要拡大が見込める。エプソン販売の伊東延佳RP営業部長は「小売業よりも投資の原資が少ない飲食店では、タブレット端末とレシートプリンターを組み合わせた安価な製品が求められている」と分析する。 シチズン時計の連結子会社であるシチズン・システムズは、業界最速レベルの最大毎秒500ミリメートルの印字速度を実現したレシートプリンターを11月に発売した。同社従来機比では約1・7倍に向上。セルフレジの待ち時間を短縮するなど、レジの精算業務を効率化する。 以前はPOSレジに対して1台のレシートプリンターでの対応が主流だったが、セルフレジの普及で複数台のレシートプリンターが設置されるようになった。顧客のまとめ買いで長いレシートが出力されることや、レシートとともにクーポンやポイント取扱票などを複数枚発行する例も増えている。 企画開発部商品企画課の坂野寛課長は「人手不足は飲食・小売業に限らないため、医療機関などでの導入拡大も見込める」と期待する。ホテルの精算明細や家電量販店での保証書発行など、業態によって多様な活用方法があり、印字速度向上の効果は大きいとみられる。