大飯原発判決で注目 「人格権」って何?
福井県などの住民189人が関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを求めた裁判で、福井地裁が再稼働を認めない判決を出しました。2011年の福島第一原発の事故後、原発の運転差し止めを命じる判決は初めてのことです。なかでも、今回の判決が注目を集めているのは、原発の持つ本質的な危険性として「人格権」という権利の侵害を指摘し、「事故が起きたら半径250キロ圏内の住民の人格権が侵害される」としたことです。この「人格権」とはどのような権利・概念なのでしょうか。
「名誉権」「環境権」「プライバシー権」など
人格権とは、個人の「人格的生存に不可欠なもの」を保護する権利のことで、一般的には「名誉権」「自由権」「環境権」「パブリシティ権」「プライバシー権」などがその内容とされています。実際には、産業廃棄物処理施設の建設の差し止め請求や出版物の差止め請求、たばこ製造の差止め請求、大気汚染の可能性のある施設の建設差止め請求、そして原子力発電所の建設・運転の差止め請求など、生活妨害や身体侵害から個人を守るための差し止め請求の根拠とされることが多く、今回の大飯原発の運転差し止めもこうしたケースのひとつといえるでしょう。 もっとも、「人格権」は日本国憲法によってはっきり規定されているわけではありません。日本で初めて最高裁が人格権について言及したのは、大阪国際空港(伊丹空港)付近の住民が空港の夜間利用差し止めを求めた81年の「大阪国際空港事件」ですが、このとき裁判官は人格権の適用対象の不明確さを指摘しています。また、最高裁レベルで初めて人格権という権利が認められたのは、名誉毀損にあたる雑誌記事の事前差し止めを求めた86年の「北方ジャーナル事件」ですが、この裁判でも人格権が適用される対象は明らかにされませんでした。「人格権としての名誉権は、生命、身体とともに極めて重大な保護法益」としたものの、定義づけはされなかったのです。法律の専門家の間でも、人格権の内容についてはいろいろな見方があります。