「8歳9歳でも生理がくるのがザラな時代」に親が知っておくべき「初潮期の新常識」は?私たちの頃との違いを医師が解説(前)
治療の方針も大きく変わった。過去の常識をアップデートして
――初潮期トラブルの原因に関する解像度が、我々の時代より格段に上がっているのですね。となると、月経痛の治療方法も大きく変化しているのでしょうか? 昨今の月経困難症の治療では、痛みや辛さを我慢をせず、漢方薬や痛み止めを適切に使います。なのですが、せっかく医療につながっても、まだまだお母さんが「痛み止めは飲んじゃダメ」と止めてしまうことが多いのです。 「クセになって効かなくなるから」「量が増えていってしまうから」と鎮痛剤を躊躇する場合、その認識は改めてほしいと思います。というのも、痛み止めはその仕組み上、痛みが強くなってから飲んでもよく効きません。痛くなる前のかなり初期に飲むのがベストなので、処方された痛み止めは痛み始める前にためらわず飲ませてください。 ――鎮痛剤はカロナールなど安全性の高いものを使うのでしょうか? いえ、初潮が来ている子ならば大人と同じ鎮痛剤、たとえばロキソニンなどで大丈夫です。まずは産婦人科を受診してください。 昨今では低用量ピル(LEP)の処方も増えました。他に、子宮内膜を薄く保って月経そのものをほぼ止めたまま維持する黄体ホルモン製剤の処方も増えており、血栓症のリスクを高める卵胞ホルモンが入っていない点を評価する医師もいます。このほか、漢方が体質にあって調子がよくなる人もいます。 親世代はピルに忌避感があるかもしれませんが、Z世代の若者はオンラインピルを積極的に活用していたりします。産婦人科医が関与せず処方するケースがある点には少々戸惑いを感じなくもないですが、しかしピルを飲み始めると生理痛そのものが軽くなりますし、生理がいつくるかわかるようになるのはとてもラクです。 ――黄体ホルモンはあまり耳慣れないかもしれません。 薬剤名でいうとジエノゲストです。黄体ホルモンを飲み始めてしばらくすると月経そのものが止まりますので、排卵をゆるやかにストップさせることができます。ただし、よく誤解されますが、こうして排卵を止めることで将来の「卵の温存」にはなりません。原子卵胞の数はとても多いので、排卵しないから貯めておけるというわけでもないのです。 ――排卵を止めてしまっても体には問題ないのですか? 排卵自体は妊娠するために起きており、月経とは妊娠の準備をしたうえで妊娠しなかったから起きていることです。つまり、妊娠したくないときは月経を休んでよいのです。月経がこないからといって体内になにかが溜まってしまうこともありません。 低用量ピル(LEP)は卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモンの合剤が一般的です。含まれているホルモン量が同じ一相性、だんだんホルモン量が増える三相性の2種類があり、基本は21日服用7日休薬。この28日周期を維持して、7日の休薬の間に月経がくるというサイクルです。薬剤名で言うと、ルナベル、フリウェル、ヤーズ、ヤーズフレックス、ジェミニーナなど。ヤーズフレックスは28日の周期投与のほか、最長120日の連続服用が、ジェミーナも77日の連続服用が可能です。 ここまでの記事では昨今の「月経の管理」について伺いました。つづく【後編】では子ども世代と「低用量ピル」の付き合い方について、引き続き小川先生にご解説いただきます。
オトナサローネ編集部 井一美穂