定数是正と一票の格差をどう考えるか 政策研究大学院大学教授・飯尾 潤
ただ、衆参両院の役割の違いということに着目すれば、人口が少ない地方の立場を配慮することは可能かもしれない。つまり、現在のように衆参の権能が対等で似通った存在であれば、参議院の定数不均衡(衆議院よりもずっと大きい)も同じように是正されるべきであるが、衆議院よりも権限が限定され、違う役割を持つのであれば、地方ごとの代表を議員に含むなど、多様な代表のあり方が可能だとも考えられるからである。ただ、こうした変更は憲法改正を含む大仕事である。その意味で参議院についても、まずは定数是正が必要である。ただ、参議院は総議席が少ないうえ、半数改選(3年ごとに全議席の半分ずつが選挙となる)のために定数が少なく、端数の関係から定数是正が格段に難しいことにも留意が必要である。 いずれにせよ、選挙は民主政治の基盤となるのであり、その公正さに疑問が付されるようなことは避けなければならない。その意味で、定数是正問題への関心が高まり、有権者の強い後押しのもとで国会議員がより積極的に行動していくことが求められよう。 --------------- 飯尾潤(いいお じゅん) 政策研究大学院大学教授、政治学。著書に『現代日本の政策体系』(ちくま新書)『日本の統治構造』(中公新書)、編著に『政権交代と政党政治』(中央公論新社)など