大河ドラマ「光る君へ」が10倍楽しくなる ベストセラー作家下重暁子が語る 紫式部より清少納言“推し”の理由
紫式部が主人公の大河ドラマ「光る君へ」(NHK)が放送される中、ベストセラー作家の下重暁子さんが『ひとりになったら、ひとりにふさわしく 私の清少納言考』(草思社)を上梓した。あえて清少納言にスポットを当てた理由やその面白さなどについて伺った。 ◇紫式部は完全なストーリーテラー ちょうど1年ほど前でした。編集者との雑談でNHKが大河ドラマで紫式部をやるという話になった時、私が「紫式部より清少納言の方が好きなのよ」と言ったら、編集者から「それなら下重さんの清少納言考を書いてください」と言われて引くに引けなくなったんです。 過去2回、清少納言の随筆『枕草子』の原文を読んでいて、改めて読み直す必要があるため、夏休みを利用して軽井沢の山荘で読み始めました。しかし、これが大変。自分なりに解釈しても納得いかない文章が結構あり、2カ月ほどかかりましたね。 原文へのこだわりは、〝無色透明〟ということか。数々の訳書はあるが、訳者の色(解釈)が出ていて、自分なりの解釈が変わってしまうことを避けたということだ。今回選んだのは、『枕草子(上・下)新潮日本古典集成』(新潮社、清少納言著/萩谷朴校注)だそうで、何度も繰り返し読んだという。理解を深めるその労力は想像に難くない。しかし、覚悟を決めて読み込み、〝完走〟した。その上で下重さんは、清少納言の魅力について、こう語る。 平安時代は、貴族と平民との身分の差が激しい格差社会でした。大河ドラマでは紫式部も清少納言も貴族社会の下の方に描かれているけれど、本当は清少納言の方がずっと下だった。父は清原元輔という歌人で『百人一首』にも出てくるほど有名な人ですが、いわゆる〝貧乏学者〟だった。 その中で清少納言は父の影響もあってか、漢文、漢詩が得意だった。父親の友人たちも彼女の才能に喜び、教えたりした。しかし、当時の貴族社会の中で、女性文学は主に仮名(かな)文字でした。『枕草子』も仮名文字ですが、体言止めを多用しています。リズムがあって随筆でありながら詩のような作風は、漢文からの影響によるものでしょう。