選挙カーは走行中シートベルトしなくてイイの? 法律違反も警察が見逃すというのは本当でしょうか
選挙カーはシートベルトしなくても良いってホント?
これら規制は、公正な選挙を目的とした公職選挙法によるルールになりますが、選挙カーは公道を走行する自動車である以上、一部に例外規定があるとはいえ、原則として道路交通法や車両運送法を守る必要があります。 選挙カーで使用が許される車種は、3ナンバー、5ナンバー、4ナンバーの乗用車と商用バン、4WD車とされています。なお、候補者の身体に障害がある場合に限って、8ナンバーの「福祉車両」の使用が認められています。 これら車両を選挙カーとして使うためには、マイクやスピーカーの音響設備や看板、演説台を追加する必要がありますが、こうした装備を勝手に設置すると違法改造車となります。そのため、選挙カーは「設備外積載」という特定の期間のみ運行できる許可を警察署に申請する必要があり、万一この手続きを怠ると、道路交通法や車両運送法の違反となる可能性もはらんでいます。 公道を走る以上、選挙カーも法律や交通ルールを守らなければ警察の取り締まりを受けることになりますが、道路交通法や道路標識で定められている駐車禁止のほか、通行止めや歩行者用道路は除外対象となっており、走行が認められています。ただし、交差点内や坂の頂上付近、駐停車禁止とされている場所は除外されません。 道路交通法施行令では、選挙運動中の選挙カーはシートベルトの着用義務が免除されています。ただし、助手席の窓枠に腰を掛けて身を乗り出して乗車するいわゆる「箱乗り」はアウト。昭和の時代には「箱乗り」で選挙を戦う候補者の姿がよく見られましたが、道路交通法では座席以外に乗車することは禁止されています。 ただし、実際に警察官が取り締まりを行うことは少なく、ほとんどが見て見ぬ振りをしているようです。とはいえ、国民の代表である国会議員に立候補している人間の行為としては褒められたこととは言えません。
事故のペナルティは一般車と同じ
静岡県伊豆市で2024年10月14日、市議会議員選挙の選挙活動中に、候補者の乗る選挙カーとオートバイが衝突し、オートバイを運転していた男性が全身を強く打って重傷を負う事故がありました。 交通事故が発生した場合、当たり前ですが選挙カーといえども、負傷者の救護、他の交通への危険防止、警察への事故報告の義務が課されます。そして、警察の捜査の結果、過失割合に応じて刑事・行政・民事の処分を受けることになります。 公職選挙法により選挙カーの使用は原則として候補者1人につき1台(参議院議員選挙の比例代表選出の場合は2台)までと定められていますが、事故などで選挙カーが使えなくなった場合は、代替の選挙カーを用意することが認められています。ただし、選挙管理委員会に車両変更の申請が必要なほか、所轄の警察署へ「設備外積載」の再提出などといった手続きも必須であることから、限られた選挙戦の日程の中で時間的なロスは避けようがありません。 また、事故が候補者のイメージダウンにつながる恐れもあり、結果として有権者の投票行動に影響が及ぼすことも多分に考えられます。こうしたマイナス面を考えると、選挙カーは一般のドライバー以上に交通安全意識を持ち、絶対に事故を起こさないようにしなければならないと言えるでしょう。
山崎 龍(乗り物系ライター)