子どもを厳しく叱る必要ってあるの? 児童精神科医が出した答え
忙しい時に限って問題を起こしたり、何度注意しても聞かなかったり...そんな時は、子どもを厳しく叱らなければ、という意識が働きがちです。しかし「厳しく叱ること」は本当に子どものためになるのでしょうか? 児童精神科医の精神科医さわさんが解説します。 【マンガ】「育てやすい子・そうでない子」の違いとは?第2子を産んで気づいたこと ※本稿は、精神科医さわ著『児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること 』(日本実業出版社)から一部抜粋・編集したものです。
否定から自信をなくし、人を信じられなくなる負の連鎖
「アダルトチルドレン」とは、「adult children of alcoholics」の略語で、もともとはアルコール依存症の親のもとで育った生きづらい方たちのことを指した言葉です。現在は、虐待やネグレクトなど、子どもが安心して暮らすことができなかった生活環境、つまり機能不全家族で育ち、生きることが苦しいと感じている人たちのことまでふくみ、言葉の意味が広がってきています。 「アダルトチルドレン」は医学的な診断名ではありませんが、実際に子ども時代の家庭環境の影響によって、大人になってからも、なにかに依存的であったり、自己のアイデンティティが不安定だったり、感情が不安定だったり、他人を信じられないなど、さまざまな苦しみを抱えている方を指す言葉として使われています。 ネグレクトや暴力、虐待、アルコール依存症などの親のもとで育った人だけではありません。はたから見ているぶんには親御さんがしっかりしていそうな家庭でも、子どもに対するしつけが厳しすぎる環境で育った人は、「アダルトチルドレン」と言われる特徴を持つことがあります。 たとえば、親から人格を否定するような言葉をかけられ続けて育った人。 「あんたはなんてダメな子なの」「バカ」「ウソつき」「なまけもの」など、小さいころから人格を否定するような言葉をかけられ続けた子どもは、どうせ自分はダメな人間だと思い込むことがあります。 そのままの自分でいいと思うことができませんから、自分に自信がなくなるだけでなく、他人を信じられなくなることもあります。 ただ、厳しいしつけをしている親御さんに話を聞くと、よく「厳しく叱るのは、子どもが将来困らないためです」とおっしゃいます。でも、そもそも子どもを「厳しく」叱る必要ってあるのでしょうか。