100年前の御嶽山の巡礼者たち、「日本の近代登山の父」ウェストンによる貴重な記事
巡礼の様子を1921年7月号のナショジオの特集「日本の地理」でレポート
険しい谷に架かった橋の上に立っているのは、白装束の巡礼者たち。「これから聖なる御嶽山の頂上にある神社に向かう」との説明が写真に添えられている。1921(大正10)年7月号の特集「日本の地理」に掲載された1 枚だ。 ギャラリー:流れるマグマ、立ち昇る噴煙、荒ぶる地球の迫力を実感 世界の活火山 特集の筆者は、日本の山々を世界に紹介したことで知られる英国人登山家のウォルター・ウェストン。1888(明治21)年に宣教師として来日し、御嶽山には91年と94年に登っている。その山行の記録は著書『日本アルプス 登山と探検』に詳しい。ウェストンは、巡礼者が滝に打たれて身を清める儀式や、「六根清浄(ろっこんしょうじょう)、御山快晴(おやまかいせい)」と繰り返し唱えながら登る光景など、巡礼の様子を詳しく伝えている。 当時、御嶽山は有史以来の噴火記録がなく、死火山であるとも考えられていた。しかし、厳密には「休火山」だろうと、ウェストンは同書に書いている。その言葉通り、御嶽山は1979年に長い眠りから覚めて噴火し、活火山であることが明らかになった。これをきっかけに、死火山、休火山という用語は使われなくなり、おおむね過去1万年以内に噴火した火山も活火山に含めるよう、定義が見直された。御嶽山は2014年9月27日にも噴火。死者・行方不明者63人という大惨事は、戦後最悪の火山災害となった。 ※この記事はナショナル ジオグラフィック日本版2024年9月号に掲載されたものです。
ナショナル ジオグラフィック日本版