IIJと錢高組、建設現場でLoRaWANを活用した現場環境データの収集・分析システムの実証実験を実施
株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は6日、株式会社錢高組と、同社が建設中の物流施設において、高所作業車の稼働状況や熱中症対策の暑さ指数など、建設現場のさまざまな環境データを収集・分析するため、IoT向け無線通信規格LoRaWANによってセンシングおよびモニタリング環境を構築する実証実験を実施したと発表した。 建設会社では、高所作業車をレンタル会社から借用するのが一般的で、その借用台数は現場責任者の経験値に基づいて決められるが、工事の状況によっては高所作業車の過不足が発生し、作業進捗のコントロールやレンタルコストの最適化のためには稼働状況の正確な管理が不可欠となる。一方で、現場の規模によっては、数百台が同時に稼働することがあり、アナログ管理では限界があるとともに、一般的にIoTのセンサー通信で利用されることの多いBluetooth方式では、無線基地局あたりのカバーエリアが狭く基地局台数がかさむため、導入コストや設置作業の負担が増加するという課題がある。 こうした課題を受け、広大な建設現場でも容易かつ低コストに高所作業車の稼働状況をモニタリングし、作業効率の向上とコストの最適化を図ることができる仕組みが求められている。さらに、建設機械の稼働データ以外にも、近年高温が続く建設現場における熱中症対策のための暑さ指数(WBGT)の計測や、建設機械の鍵の管理、作業進捗状況を把握するための定点写真の記録など、建設現場のさまざまなデータを収集・分析し、作業効率、安全対策向上を図りたいというニーズが高まっているという。 こうした課題に対し、IIJと錢高組は、錢高組が建設中の1フロア約3万㎡の物流倉庫の建設現場において、1台の無線基地局で広範囲をカバーできるLoRaWANを使った「IIJ LoRaWANソリューション」を利用し、各フロアに2台ずつ無線基地局を設置することで、現場環境データを収集するネットワークを構築した。 また、建設工事が進み、屋根や壁面、扉が完成するなど現場環境が変化しても、基地局の設置位置を変更することなく現場の各所に設置したセンサーとの通信を確立でき、建設現場においてもLoRaWANを活用することで、効率的なセンシングが可能な無線ネットワークが構築できることを実証した。 さらに、無線基地局とデータ分析を行うクラウドとの間は「IIJ モバイルサービス/タイプI」によるLTE回線で接続し、IIJと錢高組の両社でさまざまなセンシング・モニタリングデータの可視化および分析を行った。 高所作業車の稼働状況・位置状況管理では、振動センサーとマグネット開閉センサーを高所作業車のモーター付近に取り付けることで稼働状況を計測し、ビーコンによる位置測位を行って高所作業車の位置情報を可視化した。また、取り付け方法を工夫することで、マグネット開閉センサーのみでも高所作業車の稼働状況を正確に把握できることを確認した。 高所作業車の鍵管理では、高所作業車用の鍵にBluetoothビーコンを取り付け、LoRaWAN通信への変換機と組み合わせることで、ビーコン情報収集機が取り付けられた鍵置き場周辺に鍵があるかどうかを判定した。 熱中症対策では、小型のWBGT(暑さ指数)トランスミッタを屋外に設置してWBGT値を測定したり、心拍数・皮膚温管理が可能なスマートウォッチをガードマンに装着して体調管理をしたりしたほか、建物内に温湿度センサーを設置して環境データを可視化することで、建設現場の熱中症対策を行った。 作業進捗把握では、LoRaWANで画像を送れる静止画カメラを設置して静止画を自動撮影し、毎日クラウドに保存することで、作業員による手動の写真撮影、保存作業を不要にした。 低コストで導入が可能なLoRaWANを活用することで、広大な建設現場においても少ない無線基地局でさまざまな現場環境データの収集・分析が可能となり、建設現場での作業効率、安全対策向上が図れることを確認した。
クラウド Watch,三柳 英樹