プーチンのウクライナ攻撃を支える“まさかの世論”…ロシア国民の本音がヤバすぎた
2024年3月の大統領選挙で圧勝し、最長で2036年まで大統領を務めることが可能となったプーチン大統領。メディア弾圧や選挙制度の操作など、彼はいかにしてロシア国民を“骨抜き”にしてきたのか。※本稿は、駒木明義『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』(朝日新書)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 自由なメディアを潰し首長選挙を形骸化 プーチンによって民主主義が失われた 茶番と化したのは、大統領選だけではない。 より根本的な問題は、言論の自由、情報公開、地方自治、政権を監視するメディアや議会の存在といった、民主主義が健全に機能するために必要不可欠な前提条件が、プーチン氏の統治のもとですっかり失われてしまったところにある。 プーチン氏は2000年に大統領選に初当選したころは、エリツィン前大統領の路線を受け継ぐ西側志向の指導者だと受け止められていた。しかし、民主主義の形骸化を進めたという点については、プーチン氏の姿勢は、政権の座についた直後から一貫していた。 2000年に大統領に就任したプーチン氏が真っ先に標的にしたのは、自由なメディアだった。チェチェン紛争の悲惨な実態を伝える報道や辛辣な政治風刺番組で人気を集めていた民間テレビ局NTVは、オーナーが詐欺などの嫌疑をかけられて追放され、政府系企業の傘下に入った。 日本の都道府県に相当する、州や地方といった「連邦構成主体」の首長選挙は、2004年9月にロシア南部北オセチア共和国のベスランで起きた学校占拠テロを機に廃止され、大統領による任命制が導入された。 首長公選制は2012年に復活した(一部の地域では、議会による間接選挙制)が、実態としてはその後も大統領による事実上の任命制が維持されている。 その仕組みはこうだ。 政権が首長を交代させたいときには、まず現職に辞任させ、プーチン大統領が意中の候補を首長代行に任命する。このため首長代行はその後に行われる本番の選挙に、事実上の現職として臨むことができる。 つまり日本とは異なり、首長が任期途中で退陣した場合、後任を選ぶ選挙は新人同士の争いにはならないのだ。こうして選挙は形式的な信任投票の色彩が濃くなる。 実態として、プーチン政権下で、首長職は大統領府が任命権を持つ重要ポストの一つという扱いになっている。そんな首長たちが政権にたてつくことなどあり得ない。 大統領府から任命された首長たちは、常時大統領府から厳しい査定を受けている。大統領選や議会選での投票率や与党候補の得票率は、特に重視されているようだ。 かつては大統領と激しく対立することもあった議会も巧妙に手なずけられた。2007年の下院選を機に小選挙区制が廃止され、比例代表区で当選に必要な最低得票率が5%から7%に引き上げられた。 ● チェチェン攻撃にはあった議会からの弾劾 プーチン政権下では想像さえできない これによって、一部の地方で個人的な人気がある反政権派の有力政治家や、小政党が締め出された。その後、選挙制度はほぼ元に戻されたが、すでに批判勢力が議席を獲得することは困難な状況となっていた。