能登半島地震で被害に遭われた方へ。税務に関する対応策をご紹介します
令和6年1月1日、能登半島地震が発生しました。被災地では混乱が続き、復興にはまだまだ時間がかかると見られます。一方で、被害に遭われた方の中には、これから迎える確定申告などの各種税務手続きにおいて不安を抱えている方もいるでしょう。 ただし、災害などやむを得ない場合には、税金の申告や納税が延長されるといった措置が用意されています。ここでは被害に遭われた方に役立つ税務関連情報をご紹介します。 ●災害を受けた際には申告・納税等の期限を延長できる 災害などの影響で、期限内に国税の申告や納税ができない場合には、「災害等による期限の延長」により、その期限を延長することができます。 期限は「その理由がやんだ日から2か月以内」とされていて、「やんだ日」とは、申告・納付等をするのに差し支えないと認められる程度の状態になった日をいいます。延長の対象となるのは、国税に関する法律に基づく申告や申請、請求、届出や、その他の書類の提出などとなっています。 なお、災害等による期限の延長には、「地域指定」と「個別指定」があります。 「地域指定」は、国税庁長官が被災地域と指定した場合、その地域に住む納税者が対象となります。能登半島地震は「地域指定」とされていて、富山県・石川県を対象に、国税に関する申告や申請、納付等を延長する措置が講じられています。 そのため、富山県・石川県を納税地とする方はご自身で期限延長の申請をする必要はなく、すべての税目について自動的に期限が延長されることとなります(※令和6年1月1日以降に到来する申告・納付等の期限)。 納税地が石川県・富山県以外の方でも、能登半島地震により被災され、申告・納付等をすることが困難な場合は、所轄の税務署に「個別指定の期限延長」を申請し、承認されれば申告・納付等の期限の延長を受けることができます。 また、能登半島地震により、財産に相当な損失を受けた場合や、国税を一度に納付することができない場合には、所轄税務署に申請し、その承認を受けることにより、納税の猶予を受けることができます。 ●滅失した建物等の固定資産税は、課税なしまたは減免される見通し 固定資産税は毎年1月1日時点で存在している家屋、土地の所有者に支払い義務がありますが、震災が発生したのは1月1日でしたので、当日倒壊した建物などに固定資産税が課されるかどうか、気になるところです。 これについて総務省は、能登半島地震で被害に遭った家屋、土地の固定資産税評価に関する通知を全国の自治体に出しました。 1月1日のうちに全壊、焼失などで建物が「滅失」した場合は課税せず、2日以降の被害は市町村が独自に減免するなど、被災者の状況に十分配慮するよう求めています。 ●所得税の負担を軽減できる「雑損控除」「災害減免法」 災害などで被害を受けた際、所得税の負担を軽減できる「雑損控除」「災害減免法」という制度があります。 「雑損控除」は、災害・盗難・横領等により資産に損害を受けた際に所得控除を受けることができる制度、「災害減免法」は災害による損害額と所得金額に応じて、所得税が免除または軽減される制度です。 制度の適用を受けるには、確定申告にて所定の項目を記載し、所定の書類を添付する必要があります。今回の能登震災は令和6年1月1日に発生したため、雑損控除または災害減免法は、基本的に令和7年の確定申告にて適用となります。 ただし、自民党の税制調査会はこの「雑損控除」の運用を柔軟にし、令和5年分の所得(令和6年の確定申告)に適用できるよう、政府に求めるとの報道がされています。 ● 事業者の方に向けた特別支援も また、事業を営む方は今回の地震により当面の営業停止を余儀なくされ、今後の資金繰りに不安を覚えているのではないでしょうか? 中小企業庁や経済産業省では、そのような方々のための支援策や特別相談窓口が設けられていますので、こちらも参考になさってください。 ・中小企業庁|令和6年能登半島地震に係る資金繰り支援のご案内 https://www.chusho.meti.go.jp/saigai/r6_noto_jishin/dl/shikinguri.pdf ・経済産業省|令和6年能登半島地震による災害に関する特別相談窓口一覧 https://www.meti.go.jp/press/2023/01/20240104001/20240104001-r2.pdf 被害に遭われた方には、1日も早い復興をお祈り申し上げます。 <参考> ・国税庁|令和6年能登半島地震に関するお知らせ (https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/noto/index.htm) 【取材協力税理士】 小林 拓未(こばやし たくみ)税理士 2017年東京都中央区にて開業。「専門家として、長期的な視点で顧問先の発展に尽力する」ことを経営理念に掲げる。2018年から社会保険労務士業務開始。横浜支店と葛飾支店、津田沼支店を開設し、業務拡大中。 事務所名 :税理士法人石川小林 事務所URL:https://www.ktaxac.com
弁護士ドットコムニュース編集部