繰上げ受給・繰下げ受給で年金額はいくら変わる?「60歳、65歳、70歳、75歳」年齢ごとの年金総受給額をシミュレーション
支給開始年齢の決定ポイント
年金は、一度受け取り始めると、原則として支給開始のときに決定された額が生涯の年金額となります。そのため、受給開始年齢を決定するのはその後の生活において重要なポイントです。受給開始年齢を決めるときは、「寿命や健康状態」や「仕事の継続状況」などを考慮することが望ましいでしょう。 ●寿命や健康状態 老齢年金は原則として亡くなるまで受け取れるものであるため、老後の生活において最も重要な収入となります。 そのため、一般的な平均寿命や自身の健康状態を考慮し、いつまで年金を受け取ることになるのかを見積もって、自分のその他の資産や収入と合わせて、どのくらいの年金収入があれば生活ができるのかを逆算することが必要です。 ●仕事の継続 60歳や65歳以降も厚生年金に加入をするような働き方をする場合、年金と給与の合計額によっては、年金の一部または全部が支給停止になる「在職老齢年金」の制度があります。 支給を早めても他に収入があることで支給が停止してしまうと、年金額の減額だけがされて受給できないことになるので注意しましょう。 さらに、年金と給与収入が合わさることで年間の収入合計が高額になり、所得税の税率が高くなることも考えられます。
年金受給開始年齢別の受給額シミュレーション
では、具体的に何歳から年金を受け取れば、生涯で受け取れる年金額が高くなるのでしょうか。 今回は、以下の条件でシミュレーションを行い、各年齢で受給を開始した場合の生涯の総受給額を比較していきます。 【前提条件】 ・65歳からの年金受給額:月額14万4000円(令和4年度の老齢年金平均受給額) ・年金受給期間:90歳まで(65歳の人が90歳まで生存している割合が62%であることを参考に設定) ・年金受け取り開始年齢:60歳、65歳、70歳、75歳で比較 ●60歳で受給を開始する場合 老齢年金は、1ヶ月繰り上げるごとに0.4%減額(昭和37年4月1日以前生まれは0.5%)されます。 65歳が原則の支給開始年齢であるため、60歳で開始した場合は24%が減額されます。月額の受給額と90歳までの受給額は下記の通りです。 月額受取額:14万4000円×0.76=10万9440円 90歳までの受取額:10万9440円×12ヶ月×30年=3939万8400円 ●65歳で受給を開始する場合 65歳は、増額も減額もされない金額となるため、月額と84歳までの受給額は下記の通りです。 月額受取額:14万4000円 90歳までの受取額:14万4000円×12ヶ月×25年=4320万円 ●70歳や75歳で受給を開始する場合 老齢年金を繰り下げた場合、1ヶ月ごとに0.7%増額されます。そのため、70歳で受け取る場合は42%、75歳で受け取る場合には84%増額されることとなります。 70歳開始の月額:14万4000円×1.42=20万4480円 90歳までの受取額:20万4480円×12ヶ月×20年=4907万5200円 75歳開始の月額:14万4000円×1.84=26万4960円 90歳までの受取額:26万4960円×12ヶ月×15年=4769万2800円