【未知なるフィリピン美食新時代①】 食材の宝庫・ネグロス島の 歴史と風土がもたらす豊かな味
伝統製法でつくる「マスコバド糖」
高品質で知られるネグロス島の砂糖。その製造過程を見せてもらえるとのことで、製糖工場にお邪魔しました。1918年創業の「ハワイアン=フィリッピン・カンパニー」は、フィリピン屈指の製糖工場。1日8000トンのサトウキビが絶え間なくトラックで運び込まれ、750トンの粗糖を製造しているほか、希少なマスコバド糖もつくられています。 古くからネグロス島でつくられているマスコバド糖とは、サトウキビの搾り汁を煮詰め、撹拌しながら自然乾燥させてつくる未精製の黒糖。こちらの製糖工場では、職人が昔ながらの手作業でマスコバド糖を少量生産しています。特別な日には、古式にのっとりカラバオ(水牛)が製糖機を動かすこともあるそうですよ。 マスコバド糖は一般的な黒糖よりも色味が薄く、キャラメルのような香ばしさがありますが、味は意外とクセがなく使いやすいのが特徴。サトウキビ自体の品質はもとより、ネグロス島で発展した高い製糖技術のたまものです。 「ドン パパ」などの高級ラム酒や、バコロドの伝統菓子ピアヤの材料としても欠かせないマスコバド糖。最近ではミネラル豊富でヘルシーな砂糖として、海外でも注目されています。 ハワイアン=フィリッピン・カンパニー Hawaiian-Philippine Company
島の歴史を物語るヘリテージハウス
ネグロス島には、島の歴史と文化を反映した歴史的邸宅「ヘリテージハウス」が点在し、それぞれ人気の観光スポットとなっています。これらの建物は、主に19世紀から20世紀初頭にかけて、当時の富裕なサトウキビ農園主や地主によって建てられたものです。 数あるヘリテージハウスのなかでも、別格の規模と歴史を誇り、もはや遺跡といわれるのが、タリサイ市の広大な砂糖プランテーションにある「ザ ルインズ」です。かつてのサトウキビ農園の大地主、ドン マリアノ ラクソンが、亡き愛妻を偲んで建てた大邸宅で、つくられたのは1900年ごろ。長い間、ドン マリアノとその子どもたちが暮らしていました。 しかし、第二次世界大戦で日本軍がネグロス島に侵攻した際、その拠点とされることを防ぐために火がつけられ、屋根や床は焼け落ちてしまいました。骨組みだけの姿となった「ザ ルインズ」ですが、ネオ・ロマネスク様式の美しい柱や彫刻、庭園の噴水などが、当時の荘厳な雰囲気をいまに伝えています。 ザ・ルインズ The Ruins 同じタリサイ市にある「バライ ニ タナ ディカン」は、1883年に建てられたヘリテージハウス。博物館として機能する以前は、砂糖農場主であり一帯の村長も務めた、通称・タナディカンの一家が、100年以上暮らした住まいでした。 建物の外壁は、レンガとコキーナ(貝殻やサンゴを砕いてつくったタイル)を使った伝統的な石造り。重厚な家具を配したリビング、ダイニング、ベッドルーム、執務室などは見応え充分です。家族と使用人の通路が分けられていたり、キッチンや洗い場が屋上にあり換気や排水の工夫がなされていたりと、当時の暮らしもリアルに感じられます。 バライ ニ タナ ディカン Balay ni Tana Dicang 所在地 PXP8+76R,Entique Lizares St. Talisay City,Negros Occidental 電話番号 +63 34 495 2104