“電子廃棄物の墓場”と出会い……世界が注目する美術家・長坂真護さん、ゴミのアートで「スラム街を変える」 売り上げをガーナに再投資するワケ
■地平線の一歩手前まで電子ゴミが
なぜゴミから作るのか。ガーナのスラム街「アグボグブロシー」との出会いは、衝撃的なものだったといいます。長坂さんは「地平線の一歩手前まで、我々が捨てた電子機器の亡きがらみたいなものが続いている」と振り返ります。 「2つ選択肢があったんですよね。粛々と『なんて日本人に生まれてありがたいんだ』と思って生きるか、『スラム変える』って言い切るか。半年くらい悩んだんですよ。自分の人生を一変してしまうような、それくらいのインパクトがありましたね」 アグボグブロシーは、世界中から集められた何千トンもの電子廃棄物が投棄される、電子ゴミの墓場です。スラムの人々は電子ゴミを燃やし、取り出した金属部品を売って生計を立てていて、有毒ガスを含む煙が充満し、健康被害が出ているといいます。
■「恥ずかしい時代の代表作に」
その地で今、長坂さんはさまざまな活動をしています。 「リサイクル工場、現地にね。あと農業、EV(バイク)の開発を、おかげさまで32人の従業員とやらせてもらっています」と長坂さんは話します。 自身の収入は売り上げの5%。売り上げの多くを元手に、ガーナでの事業に再投資しているといいます。 長坂さん 「ゴミをゴミと称して捨てていた野蛮な時代。旧石器時代みたいな紹介で僕のアートがルーブル(美術館)の真ん中に、モナリザの隣に。それかモナリザをのけて、恥ずかしい時代の象徴として。僕のアートはその代表作になると思う」
■まち全体を「キャンバス」に見立てて
中島芽生アナウンサー 「アートで生みだしたお金で、今後はどういったことを目指していますか?」 長坂さん 「こうした作品を販売した利益で、リサイクル工場やオーガニックの農園をガーナにつくっています。目標は1万人の雇用。今は32人なので、今のところ0.32%です」 「ただ活動を進めて1万人が住むサステナブルなまちをつくることができたら、目標達成度は100%になります。そのまちの大きさ、自分のキャンバスが、そこに動く生活、サステナブルな社会が形成されていたら、そこに立つ建物も全部、平和という作品になります」 「ピカソが持つ原画記録1万3500点を超える、僕の1万3501点目の作品にしていきたいなと考えています」 中島アナウンサー 「まち全体、それ自体がアートということなのですね」 長坂さん 「そうですね。それをキャンバスとして見立てています」
■個展タイトルに込められた思いとは?
中島アナウンサー 「各地で開く個展ではいつも同じタイトルを付けています。その理由は何でしょうか?」 長坂さん 「個展タイトルは『スティル・ア・ブラック・スター』です。ガーナが1957年に独立した時、国際社会の中で、国旗に描かれた黒い星のようにまだ我々の星は輝いていない。そんなメッセージがあります」 「ただ、その星を輝かせるために我々はこれからも邁進していくというのが目標です」 中島アナウンサー 「東京の日本テレビ本社では、27日~31日の5日間、長坂さんの作品の展覧会を行います。入場は無料ですので、この機会にぜひ足を運んでみてください」 (5月26日『news zero』より)