ナンバー1名古屋めし「ひつまぶし」の美味は東海地方の人が一番分かる!~大竹敏之のシン・名古屋めし
単なるアレンジ料理じゃない!伝統調味料を活かした郷土の味
番組独自のアンケート調査「最新!東海3県の100人に聞いた!好きな"名古屋めし"ランキング」で堂々1位に輝いた「ひつまぶし」。なごやめし普及促進協議会による「1億人の名古屋めし総選挙2022」でもやはり1位。名古屋めしの中では貴重なごちそうグルメだけあって、「食べたい!」という期待感が絶大なる支持につながっています。 「ひつまぶし」という呼び名は、木製のおひつに盛ったごはんの上に、細かく刻んだうなぎの蒲焼きをまぶすのが由来。おひつから茶碗に移してまずは蒲焼きのコクや香ばしさを楽しみ、続いて薬味をちらして爽やかに、最後はお茶漬けでさっぱりと。一品で三通りの食べ方を楽しめる、今どきの言葉で言うなら"味変"(あじへん)グルメです。 うな丼、うな重のアレンジ料理ともいえますが、では名古屋以外でこの食べ方が成立したかというと決してそんなことはありません。名古屋および東海地方のうなぎ屋は、溜り醤油をベースに蒲焼きのタレを仕込みます。溜り醤油はもともと東海地方特産の豆味噌の副産物として生まれたため、豆味噌と同様にうま味がこってり濃厚です。さらに、この地域ではうなぎを蒸さずに強火でバリッと焼き上げます。調味料と調理法、ふたつの地域的特徴があるからこそ、細かく刻んだりお茶漬けにしたりしても、うなぎ本来の食べ応えが保たれているのです。他の地域で同様の食べ方をしたら、おそらくちょっと物足りない味わいになってしまうでしょう。
「料亭」か「まかない」か? 発祥に諸説
ひつまぶしのルーツは、料亭の〆として取り分けしやすいようにうなぎを細かくした、出前しやすいように割れやすくて重い陶器の丼から木製のおひつを使うようになった、との説が広く知られています。 もうひとつ、三重県津市の老舗うなぎ店で聞いたのが「まかない」発祥説です。これは天然物が使われていた頃、大きすぎるうなぎは身が固いため、細かく刻んで手早く焼き、従業員のまかない用にしていたというもの。少々臭みが残るために薬味をちらし、さらに時間を節約するためにお茶漬けにしてかき込んだ、というのです。理由がいちいち理にかなっていてかなり信ぴょう性が高いと感じます。ただし、お客に出すようになったのは名古屋の方が先で、この店では名古屋での評判を聞きつけ、昭和50年頃にひつまぶしをメニュー化したとも明かしてくれました。