浜野谷憲吾、『神業回避』で3着確保 冷静さと百戦錬磨の技巧光る【下関ボート・SG「チャレンジカップ」2日目】
◇20日 SG「第27回チャレンジカップ」2日目(山口県・下関ボート) ◇コラム「松ふね屋 チャレンジカップ特別編」 福岡県柳川市にあるボートレーサー養成所では、訓練生が操縦訓練で水面に出る前に、必ず行われる練習が2つある。先日、徳山でデビューした新人選手から聞いた。ベテラン選手にも聞いてみた。本栖研修所でも必ずあったという。 「舟の中に体を隠す『キャビ伏せ』。失速時に後続艇が体に直撃することを避ける練習です。もう一つは逆ハンドル。これは失速艇との衝突を避けるための訓練。どちらもレース中の負傷を防ぐための練習です」 操縦技術や勝ち方より、まずは自他の生命や身体を守り、尊ぶことを教える。そのためのルーティンだ。 2日目3R。1周2Mで目前の転覆艇を逆ハンドルで間一髪避けながら、3着を確保した。6号艇の浜野谷憲吾(51)=東京=だ。 「危なかったっすね。でも前の艇がコケたのが見えたんで…」。大敗は許されない中での神業回避。力や勢いに活路を求めない、百戦錬磨の技巧が光った。 グランプリ18人枠入りへは優勝しかない状況。年明けからは前期のF禍により1995年後期以来守り続けたA1級からの陥落が決まっており、その前に存在感をアピールしたい…。しかし、浜野谷は気負わない。 「優勝ならグランプリという気持ちでは来ていない。一走一走、ただそれだけです」 白熱のバトルの中だからこそ生きる冷静さがある。浜野谷憲吾が冷静に、下関の水面を見つめている。 ▼松下雄一郎(まつした・ゆういちろう) 1970年生まれ、54歳。神戸市出身。元デイリースポーツ記者。プロ野球阪神担当として2315回続いた名物コラム「松とら屋本舗」の筆者。「いちタイガースファンに戻るため」退社し、今年11月中日スポーツ入社。大好きなボートレース担当として健筆をふるう。
中日スポーツ