興國高校サッカー部 インターハイ初出場への軌跡(六車拓也監督)
【準決勝】生徒と先生が抱き合い喜ぶ姿に感動
続く準決勝(関西大学第一高校戦)も、延長まで戦う接戦でした。1-1から延長の2得点で3-1と逆転勝ちでインターハイ出場をつかみましたが、主導権を握りながら70分(35分ハーフ)で決着をつけられなかったため、正直、頭の中は翌日の決勝のことでいっぱい……。みんなでスタンドへ挨拶に行っても、自分だけすぐベンチに引き返し、作戦盤を前に「明日のメンバー、どうしよう?」と。 ああでもないこうでもないと悩んでいると選手たちの呼ぶ声がして、慌てて戻って水かけ(ウォーターシャワー)の輪に入る――という状況でした。 そんな中でも、インターハイ出場が決まった瞬間は、選手や長年関わってきたスタッフ、関係者の皆さんの涙に胸が熱くなりました。だって、生徒と先生が抱き合って喜ぶなんてこと、そうないでしょう? さまざまに携わる人たちがどれほどの想いでこの大会に臨んできたのか。それが目の前で形として見えたとき、本当に素晴らしいことを成し遂げたのだなと感慨深いものがありました。
【決勝】9人入れ替えても優勝、勝因は厚い選手層
準決勝を70分で終えていれば多少のメンバー変更で臨むつもりでしたが、延長90分までいってしまった。翌日すぐ決勝(阪南大学高校戦)という非常にタフな日程だったので、90分プレーした選手をスタートから出すプランは当初からありませんでした。しかしそうなると、コンディションを含めその時点でのベストメンバーを急ぎ決断しなければならない。メディカルスタッフとも相談して、結局、準決勝から9人を入れ替えることに決めました。 インターハイ出場が決まったからメンバーを落としたわけではありません。まず考えたのは、連戦で選手にケガをさせてはいけないということ。このチームはそれまで、90分戦った翌日に試合をしたことがありませんでした。おそらく、頭では動けているつもりでも、身体がついてこなかったでしょう。 そしてもう一つ、出場機会に恵まれずとも常に自分に矢印を向け頑張ってきた選手をどこかで起用したいと考えていたこと。日々競い、高め合ってきた選手たちですから、私としては自信を持ってピッチに送り出せる、どんな結果になっても納得できるメンバー。「ここや!」と思い決断しました。 ちなみに、今回の予選では約60名の選手がトップチームに携わり、うち32名が出場しています。一般的には多くても15~16名と聞きます。その倍近い選手を起用することができたのは、いつも激しいチーム内競争をしている選手たちの頑張り、そしてトップのA以外のチームを指導するスタッフ陣のおかげ。個々が成長し、選手層が厚くなっている証拠です。 サッカー部には現在289人の部員がいます。全国的に見てもかなりの大所帯で、Aチームに関わるのはそのうち数十人だけ。普段はレベルや年齢に応じ9カテゴリー(A・B・C・D・E・F・U16-A・U16-B・U16-C)に分かれて活動していますが、所属に関わらずみんなサッカーが大好き。その真摯な姿勢は私たちスタッフが驚かされるほどです。 競争する楽しさ、自らをアップデートする楽しさを一人でも多くの選手に感じてほしいと考え、この1年でCチームからもAチームに上がれる環境を作りました。選手たちは常に激しいポジション争いを繰り広げ、A・B・Cチームを行き来しています。 今回の予選に出場したある選手は、入学時U-16Bからスタートし、2年生でD、Cとステップアップして3年でBチームへ。さらに予選前にAチームに昇格、定着しました。そうした選手の出現はチームに大きな刺激をもたらし、活性化につながっています。