「25歳までにタイトルを取れよ」藤井聡太vs伊藤匠の両師匠が登場「ミヤネ屋」が30分以上も特集を…“21歳対決の最終局”で何が起きていたか
振り駒の運もまた実力と言えるが
タイトル戦の第1局と最終局では、改めて「振り駒」をして先手番・後手番を決める。 先手番になると作戦面で主導権を得られ、AIを使った研究の成果も出しやすい。実際に過去の公式戦の年間勝率を調べると、大半の年で先手番の方が5割を少し超えている。 藤井八冠と伊藤七段の公式戦の勝率を手番で比較してみる。 藤井は先手番が8割9分台、後手番が7割7分台で、前者が突出している。伊藤は先手番が7割2分台、後手番が7割4分台で、後者の方が少し高い。藤井は合計25回のタイトル戦での振り駒において、先手番は18局、後手番は7局。運も実力といえる。 なお振り駒では、駒の表の方が多く出やすい(先手番になる)との説がある。字画が裏より多いからだ。ある凝り性の棋士は――結果は不明だが――1000回も振って検証したという。
それぞれの師匠がテレビで語った弟子への思い
話を第5局に戻す。6月20日に行われた叡王戦第5局の振り駒では、表の「歩」が3枚、裏の「と」が2枚で、藤井の先手番に決まった。 戦型は予想通り「角換わり」で、藤井は腰掛け銀、伊藤は右玉に構えた。その後、藤井は玉を穴熊に囲い、伊藤は雁木の陣形に組んだ。
ミヤネ屋はCM抜きで30分以上放送…両師匠も登場
藤井のタイトル戦23連覇と伊藤の初タイトルがかかった対局は大きく注目され、対局場に多くの報道陣が集まり、テレビ各局の情報番組も叡王戦を取り上げた。 中でも熱の入りぶりがすごかったのは、日本テレビ系列の『情報ライブ ミヤネ屋』である。 CM抜きで30分以上も放送するほどで、両対局者の小学生時代のエピソード、叡王戦の勝負、両師匠の見解、対局での「勝負めし」など、いろいろな角度から報じた。 藤井の師匠である杉本昌隆八段(55)は同番組で、このように語った。 「藤井は長時間のタイトル戦で時間をたっぷり使って考え込みます。叡王戦(持ち時間は各4時間)の第2局と第3局は、相手より先に秒読みとなって連敗しました。第5局ではいかに決断よく指せるかが大事です」 一方、伊藤の師匠である宮田利男八段(71)は「伊藤の将棋の勉強量は半端ではない。AIを利用してもそれにとらわれない思考力と柔軟性があり、叡王戦で良い結果となりました。25歳までにタイトルを取れよと激励しています」と語った。 お互いの師匠が弟子への思いを語る中で――藤井と伊藤の対局は着々と進んでいた。 <つづく>
(「将棋PRESS」田丸昇 = 文)