創設10年どうなる?ふるさと納税 総務省が対応に乗り出した「返礼品」問題
都心部自治体から批判の声 東京23区は2016年度の税収129億円減
一方、東京や大阪といった人口が多い自治体では、ふるさと納税によって税収減という憂き目に遭っています。特に、ふるさと納税によって、大きなマイナスになっているのが東京23区です。 東京23区の場合、2016(同28)年度の税収が、ふるさと納税によって129億円も減収したと試算されています。2017(同29)年度は、さらなる減収が予想されています。東京や大阪などの都心部の自治体では死活問題になっているのです。それだけに、東京や大阪などの自治体からは、ふるさと納税制度に対する批判が強まっていました。 総務省が豪華な返礼品を是正するように各地方自治体に通知を出したのは、そうした背景があったからです。しかし、総務省の通知には法的強制力はありません。あくまで、地方自治法に基づく技術的な助言という位置づけです。 そのため、豪華な返礼品をやめるのか否かは、地方自治体次第です。豪華な返礼品で多額のふるさと納税を得ていた自治体にとって、ふるさと納税は税収を増やす術でもあります。それだけに、総務省が出した通知に反発する可能性があります。
東日本大震災など災害時の義援金としても活用 制度自体は“深化”
もともと、ふるさと納税は自治体間の税収格差を解消することを目的とした制度ではありません。あくまでも、ふるさとを応援したいという納税者の気持ちに応えるための制度です。 「今回の通知で、地方自治体の中でも返礼品に対しての見直しがおこなわれると期待しています。しかし、それでも高額な返礼品を続ける自治体はあるかもしれません。その場合、粘り強く話し合いをつづけて制度への理解を得られるようにしていく考えです」(同担当者)。 ふるさと納税は、東日本大震災や熊本大震災、糸魚川大火といった災害時には義援金としても活用されるようにもなっています。こうした活用方法は、創設当初には想定されていませんでした。創設から10年という節目を迎えたふるさと納税は、深化しているのです。 今後、ふるさと納税がどういう制度になっていくのか? その動向に注目です。 小川裕夫=フリーランスライター