まだ25パーセントしか解明されていない海の底は謎だらけ。「海底地形図」が完成したら、未来はどう変わる?
日本独自の「海の地図PROJECT」もスタート
また日本財団では、2022年に日本水路協会と共同で、10年以内に日本の総海岸線約3万5,000キロメートルの約90パーセントの「海の地図」の整備を目指す「海の地図PROJECT」もスタートしています。 このプロジェクトで行う航空測量はALB(Airborne LiDAR Bathymetry)と呼ばれ、上空から特殊なレーザーを発射し、海水の透明度が高い場所では水深20メートル程度までの地形を測量することができます。
これまで日本の浅海域(せんかいいき)の詳細な海底地形情報は 2パーセント弱しか把握されておらず、水難事故予防や防災、ブルーカーボン(海藻によるCO2吸収)の促進、生態系の把握や保全など、さまざまな分野の研究・技術が遅れる一因となっていました。 「海の地図 PROJECT」が成功すれば日本の海を取り巻くさまざまな課題が解決できるだけでなく、同プロジェクトで得られた知識やノウハウをグローバルな研究機関と共有することによって、「Seabed 2030」による「海底地形図」の完成にも貢献できるかもしれません。
まとめ
これから世界的に海底地形の測量・調査が進めば、地球上の海域を100パーセント網羅する「海底地形図」の完成も夢ではありません。「海底地形図」が完成すれば、船舶の事故が減る、海底にある資源の利活用が進む、海の中の生態系についての研究が進むなど、たくさんのメリットが期待できます。 そして、この「海底地形図」を完成させるには、「海への関心」を持つ人が増えることが必要です。海への関心が高まれば、海に関する事業に携わる人々が増え、まだ解明されていないこと、知られていないことの発見につながる可能性が広がるからです。 しかし、日本財団が2024年に発表した第4回 「海と日本人」に関する意識調査によると、「海が好きだ」と答えた人は全体の約40パーセントにとどまっており、海が好きな人は年々減少傾向にあることが明らかになっています。 このままでは日本人のさらなる「海離れ」が進み、海に興味・関心を持つ人が減ってしまい、海洋研究の進展を妨げる結果につながりかねません。 皆さんもぜひ、日頃から身近な存在である海について考える機会をもっと意識してみませんか。海への興味関心を持つことで、美しい海を守り、その可能性を広げる取り組みへとつながっていくのではないかと思います。
日本財団ジャーナル編集部